国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

現代インドの村落・都市中間地帯における親密圏の再編―移動社会を支えるケア関係(2015-2017)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(C) 代表者 常田夕美子

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究の目的は、現代インドの村落・都市中間地帯 (rurban, 以下ラーバン) における親密圏の再編の様相を明らかにすることにある。
 ラーバンにおいては、村落のように父系リニージ・夫方居住の規範にとらわれず、また都市のように核家族を基本単位とせずに、家族・親族関係や知人・友人関係また近隣関係を用いた、老人や寡婦そして乳幼児のための柔軟なケア関係が生み出されていることが注目される。
ラーバンにおける新たなケア関係は、人・モノ・カネ・情報が農村と都市の間を環流する移動社会を支える生活基盤として重要である。
本研究は、特に女性の行為主体性に着目しつつ、ラーバンの人びとが、モビリティの幅を広げつつ、必要なケア関係を確保するために、親密圏を創造的に再編する過程を描写・分析する。

活動内容

◆ 2017年4月より転入

2017年度活動計画

27年度および28年度までに整理・分析したデータをもとに、さらに理解と分析を深めるために、当事者達自身が自らの状況をいかに捉え、それにどう対処しようとしているかを調査する。具体的には、新たなケア関係、ケアとモビリティの関係、親密圏と公共圏の再編について、それまでの調査結果を住民自身に提示し、特にグループディスカッションの手法を用いて、住民自身がそうした状況についてどのように考え、どのような関係や生活を望んでいるかについて、明らかにする。 この手法にインタビューを加えて、関連する具体的な事実についてもさらに調査を重ねる。
本年度の後半は、主に執筆と国内・国際学会での成果発表に取り組む。国内では日本文化人類学会研究大会、日本南アジア学会全国大会において、米国ではAmerican Anthropological Association の年次大会で研究発表を行いたい。
さらに今回の3年間の研究成果をそれ以前の研究成果と統合し、①編書Reassembling Relationships of Care:Conviviality and Conflict in New Patterns of Gender, Family and Generational Relations in Contexts of Globalizationと②RoutledgeのNew Horizons in South Asian Studiesのシリーズから英文の単著Living the Postcolonial: Women’s Agency in Contemporary Indiaを出版する。

2016年度活動報告

緯度観測所の初期の歴史を明らかにするため、(1)国立天文台水沢VLBI観測所収蔵手稿本・印刷物を対象とした明治大正期の主要出来事および職員在職期間の調査、(2)国立天文台水沢VLBI観測所が収蔵する明治大正期敷地・建造物関連史料のデジタル化、(3)明治大正期に在籍した緯度観測所所員についての聴き取り調査を実施した。
緯度観測所が編纂した手稿・印刷物を対象に明治大正期における同観測所の主要出来事と職員在職期間を調査した結果、木村栄による「Z項の発見」以降も所員数の増加は極めて緩やかであったことと、比較的早い時期から地元水沢の女学校出身者・高等小学校出身者が積極的に採用されていたことが明らかになった。
緯度観測所の明治大正期敷地・建造物関連文書・図面は保存状態が悪く、閲覧が困難であったため、『土地建物台帳』『官有財産簿』『国有財産関係書類』の3点については高精細デジタル画像を制作し、『土地建物関係書綴』については国立天文台水沢VLBI観測所の許可を得て解綴を施した。これにより、前者は現物を汚損せずに精読することが可能となり、後者は高精細デジタル撮影を行うことが可能となった。
明治大正期の緯度観測所所員については、国立天文台水沢VLBI観測所収蔵ガラス乾板から当時の写真を復元し彼らの様子を視覚的に再現するとともに、ご家族や元所員の方々の協力を得て聴き取り調査を行った。これにより、当時は多くの男性所員が詰襟を、女性所員が袴を着用していたことや、初代所長・木村栄がスポーツや芸術活動を通して所員とその家族および市民の交流を図っていたことなど、公的記録には記載されていない緯度観測所の日常が明らかになってきた。
これらの成果を図書館総合展、国際日本学コンソーシアム、日本測地学会特別展、奥州宇宙遊学館特別展・講演会、『国立天文台ニュース』で発表したところ、研究者や市民から好意的な評価を得た。