国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

アフリカ障害者の生活基盤に関する地域研究(2015-2017)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|若手研究(B) 代表者 戸田美佳子

研究プロジェクト一覧

目的・内容

生活手段を求めてサブ・サハラからアフリカ中部の熱帯林にわたる自然環境を行き来し、異なる生活基盤のなかで生計を維持するムスリムの障害者や国境をまたぎビジネスを営むコンゴの身体障害者。アフリカの障害者のなかには国家や地域社会を越えた生業活動を営む人びとがいる。
本研究ではまず、彼らと周囲の人びとの相互関係と日常の行動に着目する生態人類学的調査を実施する。そして障害者の生業活動が、さまざまな立場や地位、階層からなるアフリカの重層的な社会のなかでどのように実践され、地域的な広がりをもっているのか、もしくは変容しているのかを障害者の生業に関する資源をマッピングによって可視化していくことで、その地域特性を描く。

活動内容

◆ 2015年4月より転入

2017年度実施計画

平成29年度は前年度までに収集したデータを資源別に分類し地図上に落とす作業をおこなう。そして各地域の地域研究をベースとして、アフリカ地域の障害当事者の開発への寄与のあり方と可能性について検討する現地ワークショップをカメルーン共和国の首都ヤウンデで開催する。その際、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国およびセネガルの障害者当事者を招聘し、彼らに対して直接、意見の交換をおこなうことで、ローカルな視点に立った「障害と開発」の実践のために適切な方策を明らかにする。以上の計画が順調に進めば、平成30年度の採択を目指して、本研究プロジェクトで実施できなかったアフリカの南部と東部を含めたサブサハラ以南における障害者の生業に関する資源をマッピングする本格的プロジェクトを研究協力者たちと共同研究の形で立ち上げる。

2016年度活動報告

本研究の目的は、異なる生活基盤のなかで生計を維持する障害者に焦点を当て、彼ら障害者に関わる資源を地図化することで、それがどのように地域的な広がりをもっているのか、もしくは変容しているのかを可視化し、その地域特性を描くことにある。
平成28年度は、前年度のコンゴ共和国ブラザヴィル市およびコンゴ民主共和国キンシャサ市における現地調査で得られたデータや資料を検討し、国家の統制や規制の強化が進む両国のコンゴ川の国境ビジネスから、障害者と国家の関係について分析を加えた。また本年度は8月と12月に各2週間、コンゴ共和国の首都ブラザヴィル市とカメルーン共和国の首都ヤウンデ市においての現地調査を実施し、障害者の資源マッピングに必要なデータを収集した。
また、日本アフリカ学会第53回学術大会においての口頭発表や論文などをとおして、研究成果を発信した。

2015年度活動報告

今年度は9月7日から9月11日にかけてウィーン大学で開催された第11回国際狩猟採取民会議(CHAGS 11)に参加し、カメルーン共和国熱帯雨林地域に暮らすピグミー系狩猟採集民の身体障害者に関する研究成果をPeople with Disabilities Crossing the Boundary between Hunter Gatherer and Agricultural Societies」という題で口頭発表をおこなった。9月26日には、国立民族学博物館で開催した国際シンポジウムにおいて、カメルーン共和国熱帯雨林地域に暮らす身体障害者のライフコースを、ミッショナリーによる慈善活動や社会福祉政策の変遷と関連づけて分析した研究成果を発表した。そのほかに、京都大学や日本貿易振興機構(JETORO)での研究講演、および国内学会や研究集会での研究報告など、研究成果の発信に力を注いだ。
さらに2016年2月17日から3月5日までの18日間、コンゴ共和国のブラザヴイル市において、コンゴ川における障害者の国境ビジネスに関する現地調査をおこなった。本調査では特に、2014年にブラザヴイル市警察当局が実施した治安維持のためのオベレーションによって河港で引き起こった変化に着目し、国家の統制や規制の強化が障害者の生計活動や社会関係に与えた影響について、2014年11月に実施した現地調査や現地メディアなどの資料と比較しながら検討しなおしている。これらの成果の一部を、論文「国境をまたぐ障害者―コンゴ川の障害者ビジネスと国家」にまとめ、森壮也編『アフリカの「障害と開発」―SDGsに向けて』日本貿易振興機構アジア経済研究所(研究双書No.622)に上梓した。