国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

日本国内の民族学博物館資料を用いた知の共有と継承に関する文化人類学的研究(国際共同研究強化)(2016-2018)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|国際共同研究加速基金(国際共同研究強化) 代表者 伊藤敦規

研究プロジェクト一覧

目的・内容

1990年代以降、日欧米の主要な民族学博物館は、展示する・される・観る側の三者が情報や意見を交換して議論する機能を重要視する傾向にある。また文化人類学も、ポストコロニアル批判や交通輸送手段と情報通信技術の発達を背景として、研究する側とされる側との間で意見や解釈の双方向性を担保するフォーラム化が推進している。 現在の研究(若手A)は「日本国内の民族学博物館資料」を用いた研究である。主催した国際ワークショップなどで、上述したフォーラム化傾向の流れもあり、海外諸機関から国際共同研究の申し出を受けた。
申請者は、本課題の機会を用いて、ソースコミュニティ(資料を制作し使用してきた人びとやその子孫、以下SC)との協働熟覧の方法論モデルを世界に向けて展開を試みる。すなわち、若手Aの研究課題によって蓄積した事例に基づきながらSCのプレゼンスを高め、民族学博物館におけるフォーラム化を日本から加速させる。

活動内容

2016年度-2018年度実施計画

国際共同研究実施計画組織は以下の三機関とする。
[A] 北アリゾナ博物館 (米国アリゾナ州フラッグスタッフ、私立)Robert Breunig(名誉館長)/Kelley Hays-Gilpin(人類学部門主任学芸員)/Kathy Dougherty(元 人類学部門資料管理マネージャー<現 ワシントン大学バーク博物館、人類学部門資料管理マネージャー>)/Patricia Walker(アーカイブ資料管理マネージャー)。国際共同研究者との関わり:過去の三度の民博国際ワークショップに講演者としてBreunig館長(当時)、Hays-Gilpin主任学芸員、Dougherty氏を招聘し、本申請課題と関連深い「Reconnect Museum and Source Community」と題した基調講演などを行った。
[B] 国立アメリカンインディアン博物館 (米国ワシントンDC、国立)Gail Joice(人類学部門資料管理マネージャー)/Michael Pahn(アーキビスト)/Cynthia Chavez-Lamar(資料管理部長)。国際共同研究者との関わり:2014年10月と2016年2月の民博国際ワークショップにChavez-Lamar博士を招聘し、口頭発表を依頼した。2015年9月には申請者が訪問し、Pahn氏やJoice氏と本国際共同研究の計画や使用機材などを議論する会合をもった。
[C] デンバー自然科学博物館 (米国コロラド州デンバー、州立)Chip Colwell(人類学部門学芸員)。国際共同研究者との関わり:2014年10月の民博国際ワークショップにColwell博士を講師として招聘した。

平成28(2016)年度中に申請者一名が、機関[C]を約2週間程度訪問し、約50点のホピ製宝飾品資料の調査をColwell博士と行うとともに、資料写真撮影する。平成29(2017)年度中に申請者一名が、機関[B]を約3週間訪問し、約150点のホピ製宝飾品資料の調査をJoice氏、Pahn氏、Lamar博士と行い、資料写真撮影する。また、平成29年(2017)年度中に申請者一名は、機関[A]も訪問する。そこにSCのホピを派遣し、機関[B]と[C]で撮影した資料写真をもとに、モニター上で擬似熟覧調査を行い、その様子をデジタル記録する。平成30(2018)年度中に申請者一名が、機関[A]を訪問する。機関[A]でのアーカイブ資料調査は、アーキビストの雇用が整い次第、作業を開始する。終了年度の平成30(2018)年度に、機関[A]にてBreunig博士、Hays-Gilpin博士、Walker氏、場合によってはDougherty氏と共にデジタル化したデータの確認を行い、文字起こしや公開適正作業、翻訳、データ整理、データベースへのデータ移行などの作業を並行して行う。

2016年度活動報告

米国コロラド州のデンバー自然科学博物館のチップ・コルウェル博士(学芸員)とともに収蔵資料の写真撮影や成果発表を行った。さらに、同市内にあるデンバー美術館、コロラド州歴史協会にもホピ製宝飾品資料が収蔵されていることが判明したため、デンバー自然科学博物館経由で担当者に連絡し、資料調査が承諾されたので、資料写真の撮影とプロジェクトの概要を共有する発表会を行った。それら3機関で撮影した約100点分の資料写真を、ソースコミュニティであるホピにデータとして持参し、TVモニターに大きく映し出しながら、熟覧作業を行い、そのコメントをビデオカメラ、スチールカメラ、ICレコーダーで記録した。また、配布した資料台帳に書き込まれた・描き込まれたメモも、スキャナーでデジタル化保存した。現在はその熟覧コメントの会話の文字起こし作業を続けている。
国立アメリカンインディアン博物館の担当者に連絡を取り、正式なフォーマットから資料調査の申請を行い、承諾された。2017(平成29)年4月の渡航に向けて、資料情報の整理を進めている。
北アリゾナ博物館では施設を利用させてもらい、コロラド州の3館のデジタル熟覧や今後のデジタル熟覧に必要となる機材を保管してもらっている。人類学の主任学芸員であるケレイ・ハイズ=ギルピン博士(学芸員)にはプロジェクトの進捗を報告し、今後の展開について密に連絡を取り合っている。