国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

アフリカにおける価値の計量と個別的アカウンタビリティにかんする人類学的研究(2017-2018)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|研究活動スタート支援 代表者 早川真悠

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究の目的は、南部アフリカ都市部における人びとの経済活動と会計方法(モノの計量、価値の数量化、財産状況の管理)について人類学的調査・研究をおこない、彼ら独自の「個別的アカウンタビリティ」を探ることにある。 具体的には、a.南部アフリカでの現地調査、b. 文献調査、c.会計学との比較から、次の三点を明らかにする。
1. 法定通貨の機能と人びとによる使用状況
2. 法定通貨の機能を補完する、代替手段の種類とその使用状況
3. 法定通貨と代替手段を併用した、具体的な経済活動・計量方法と会計方法
以上の作業から本研究では、法的制約でも市場原理でもない、人びと自身の基準による「民衆の経済(popular economy)」(Guyer 2004)の実証的モデルを提示し、地域経済や地域通貨のあり方と可能性について検討する。

活動内容

2018年度活動計画

本年度は、前年度の予備調査を踏まえ、おもにレソトにおけるジンバブエ人移民の行商について現地調査をおこない、南部アフリカにおける個別的アカウンタビリティについて明らかにする予定である。
4ー7月:現地調査準備:
・前年度調査結果を整理する。ネットなどを介してインフォーマントと連絡を取り、不明点や疑問点を解消しておく。 ・会計学者から、前年度調査結果について意見を乞う。 ・経済人類学と監査・会計にかんする人類学の関連文献をレビューし、具体的な分析枠組みを検討する。
8-9月:現地調査(おもにレソト):
・前年度の調査結果を踏まえ、レソトにおけるジンバブエ移民の行商について調査する。インフォーマントと対象を絞り、商売の方法全般と帳簿のつけ方、掛け売りおよび代金回収の方法について集中的に聞き取り・参与観察をおこなう。
9-1月:調査結果と資料の整理:
・調査結果を整理し、論文執筆を開始する。 ・共同研究会等で会計学者から意見を乞う。
2-3月:調査結果のフィードバック(ジンバブエ):
・最終現地調査をおこなう。・グレート・ジンバブエ大学にてワークショップを開き、調査結果について他の研究者たちと意見交換する。・ジンバブエ大学発行雑誌Zambeziaに論文を投稿する。

2017年度活動報告

本研究の目的は、南部アフリカにおける人びとの経済活動について会計方法(モノの計量、価値の数量化、財産状況の管理)に着目しながら人類学的調査・研究をおこない、彼ら独自の「個別的アカウンタビリティ」を探ることにある。
本研究は、a.南部アフリカでの現地調査、b. 文献調査、c.会計学との比較、という三つの作業を軸にすすめる。これらの作業から、1. 法定通貨の機能と人びとによる使用状況、2. 法定通貨の機能を補完する代替手段の種類とその使用状況、3. 法定通貨と代替手段を併用した、具体的な経済活動・計量方法と会計方法、について明らかにする。
2017年度は11月27日~12月2日および12月24日から1月14日までジンバブエを訪れ、現地調査・調査許可取得の可能性を探った。また、2018年度末に予定している最終成果発表の方法について検討した。調査地については、現地状況や当局の対応、現地の研究者の意見等を考慮した結果、残念ながら2018年8月までにジンバブエでの調査許可の取得は困難と判断した。そのため2018年度は、南アフリカのヨハネスブルグおよびレソト共和国におけるジンバブエ人移民たちの経済活動を対象に調査することとした。また、成果発表については、2018年度末にジンバブエのマシンゴ市にあるグレート・ジンバブエ大学でのワークショップ開催を準備している。
文献調査については、J. GuyerのMarginal Gains(2004)の読書会に参加することができた。また、9月には会計研究学会にて研究発表をおこない、会計学者からの助言をとおして会計にかんする知見を深めることができた。