国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

贈与交換による平和の構築・維持・再生産に関する人類学研究―ソロモン諸島の事例から(2017-2019)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|特別研究員奨励費 代表者 藤井真一

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究の目的は、平和的な社会関係の構築や維持・再生産に果たす贈与交換の働き(特にモノの役割)に注目しながら、「民族紛争」中のソロモン諸島ガダルカナル島民の生活戦略と紛争後の日常生活を解明することである。
そのために、(A)ガダルカナル島北東部において紛争中の島内避難と積極関与の実態を明らかにするための臨地調査と(B)ガダルカナル島西部における島内避難者の生活実態を明らかにするための臨地調査および同島南部における紛争関与者への聞き取り調査、(C)社会生成の観点から贈与交換論を整理して再検討するための文献調査ならびに社会関係の構築を媒介するモノについての臨地調査を実施する。
(A)(B)の臨地調査で共通して行うのは、「民族紛争」中の人々がどのような生活をいかに構築していたのか、また現在どのように生活しているのかを調べることである。

活動内容

◆ 2017年4月より転入

2018年度活動計画

上記の目的を達成するために、本年度は(B)ガダルカナル島西部における島内避難者の生活実態を明らかにするための臨地調査と(C)社会生成の観点から贈与交換論を整理して再検討するための文献調査ならびに社会関係の構築を媒介するモノについての臨地調査を実施する。
前年度に引き続き、社会生成における平和状態の維持と再生産を考える枠組みとしての贈与交換論の再検討を行う(Cに対応)。そのために、現有設備に加えて、最新の研究動向を押さえるべく研究費にて文献資料を購入する。
また、「民族紛争」における島内避難の実態についての聞き取り調査(Bに対応)と社会関係の構築を媒介するモノについての民族誌調査(Cに対応)を目的に、2-3月にガダルカナル島西部にて臨地調査を実施する。調査は、主にソロモン諸島の共通語であるピジン語を用い、首都ホニアラ郊外のタウバヘおよびヴィサレ地区の集落を拠点として行なう。
前年度の調査で収集したデータを分析し、その成果をInternational Union of Anthropological and Ethnological Sciencesの研究大会(7月)および国内の各種研究会で口頭発表する。学会や研究会での発表に対する質疑やコメントを踏まえ、学術論文の執筆と投稿を行なう。また、本年度の臨地調査から得られたデータを分析して、日本オセアニア学会ならびに生態人類学会の研究大会(いずれも3月)で口頭発表する。その他、学会・研究会参加のため数回の国内出張を予定している。

2017年度活動報告

本研究の目的は、平和的な社会関係の構築や維持・再生産に果たす贈与交換の働き(特にモノの役割)に注目しながら、「民族紛争」中のソロモン諸島ガダルカナル島民の生活戦略と紛争後の日常生活を解明することである。計画1年目にあたる2017年度は、主に、ガダルカナル島北東部における紛争中の島内避難と紛争への積極関与の実態を明らかにするための臨地調査と、社会関係の構築を媒介するモノについての臨地調査を実施し、下記の成果を得た。
(1)ガダルカナル島北東部において、紛争渦中における村落部での個人的な加害・被害経験の聞き取り調査を行なった。この調査から、紛争渦中における国内避難行動と生活実態の詳細に関する口述資料が集積できた。また、「民族紛争」へと積極的に関与したガダルカナル島北東部出身の元戦闘員の紛争渦中における活動実態について新たな口述資料を得た。
(2)ガダルカナル島において、紛争解決のみならず婚姻儀礼の際にも用いられる貝貨の製作に携わることで、貝貨の製作と使用に関する民族誌資料を得た。この調査から、集団間関係の構築や修復が顕著となる非日常的な局面において、貝貨というモノがどのように社会関係を操作するのかについての口述資料を収集した。
(3)国家統合・和解・平和省の職員に対して、紛争後の社会再構築過程における国家レベルでの関係修復の取り組みに関する聞き取り調査を行ない、2010年から2012年に活動した真実和解委員会に対する当事者たちの事後評価と、2017年までに執り行われた和解儀礼の事例に関する資料を得た。
(4)真実和解委員会が実施した和平活動とガダルカナル島における在来の紛争処理との間にみられる緊張関係について、日本文化人類学会の研究大会において口頭発表を行なった。この口頭発表での分析と、2017年度の臨地調査から得られた資料を総合し、『文化人類学』に論文を発表した。