21世紀の市民運動に関する文化人類学的研究―ベルリン外国人集住地区の事例(2010-2013)
目的・内容
本研究は、19世紀以来西欧を中心として近代世界を構成してきた社会原理が、見直しを迫られているという認識のもとに、新しい社会像を構築しようとする試みとしてボトムアップの市民運動を研究するものである。とくに外国人が集住する地区の都市再生プロジェクトに焦点をあてて、市民団体、移民、行政、運動家らがいかに市民運動を展開していくのか、そのプロセスを明らかにする。この分析を通して、21世紀の新しい社会像を提言することをめざす。
活動内容
2012年度実施計画
本年度の研究における重点項目は、昨年度にひきつづいて2点に絞られる。第一は、ベルリンの外国人集住地区で展開している都市再生プロジェクトのこれまでの経過と現在の状況、新しく起こっている動きについて明らかにすること。第二は、1970年代から展開してきた市民運動のひとつとして、ベルリンにおける保育園運動(キンダーラーデン運動)の歴史的な展開過程と、現在の保育園の運営状況を、事例研究として明らかにすることである。
この研究をすすめるために、本年度も現地調査を実施する。現地調査は、秋から冬にかけて約2週間程度を予定し、調査内容としては、とくに平成23年度の調査で得た情報の精査とそれに関連した情報収集に力点をおく。さらに、本年度は、本研究の中間段階での成果を、6月の文化人類学会において研究発表し、また、3月に予定されている国際シンポジウムにおいてもとりあげて、検討を加えていくことを計画している。
2011年度活動報告
本研究は、19世紀以来西欧を中心として近代世界を構成してきた社会原理が見直しを迫られているという認識から出発し、ベルリンの街区で都市再生プロジェクトがいかに展開しているのか明らかにしようとするものである。対象とするのは、外国人が集住するベルリンの街区で、都市再生プロジェクトに多様なエージェントが関わっていることに注目している。
平成23年度は9月から10月にかけて1カ月間の現地調査を行った。昨年度にひきつづき当地で展開した都市再生プロジェクトと市民の関わりについて、その過程をあとづける資料を収集した。とくに平成23年度は、キンダーラーデン運動に焦点をあてて、その複数の関係者に詳細なインタビュー調査を行った。
キンダーラーデンとは、小規模の託児所/保育所機能をもつ装置である。多くは集合住宅の1階にある使われなくなった店舗スペースを利用する。運営主体は、両親と子供と教育者の三者である。キンダーラーデンは70年代の政治運動に起源をもち、冷戦時代のベルリンで80年代にかけて発展し、都市行政において一定の位置を占めるにいたった。しかし東西ドイツ再統一後の政治的経済的状況のなかで、その行政における位置づけは変化しており、キンダーラーデンを運営してきた人々や子供をもつ両親による新たな模索が起こっている。現代のキンダーラーデンには、移民家族のための育児サービスという問題が関わり、また移民とホスト社会の子供をあわせた多文化教育という課題も関わっている。それは地域住民の隣人関係、社会関係をいかに構築するかという問題であり、都市再生プロジェクトとも直接に連続する。
本研究はキンダーラーデンを運動としてとらえて、市民運動や都市再生プロジェクトの一環として検討する視点を打ち出している。これによって、冷戦時代から冷戦後のベルリンの社会編成を明らかにしようとする。
2010年度活動報告
本研究は、19世紀以来西欧を中心として近代世界を構成してきた社会原理が、見直しを迫られているという認識のもとに、外国人が集住するベルリンのある地区の都市再生プロジェクトに焦点をあて、市民団体、移民、行政、運動家らがいかに市民運動を展開しているのか、そのプロセスを明らかにしようとするものである。平成22年度は、以下のような研究実績をあげた。
- ベルリンにおける市民運動および都市再生プロジェクトに関する調査;8月から9月にかけて1カ月間の現地調査を行い、1970年代から80年代にかけて行われた市民運動と都市再生プロジェクトの歴史的な展開をあとづけるとともに、現在においてそれがどのように受け継がれているかについて調査した。そのなかのいくつかのプロジェクトについては、関係者にインタビュー調査もおこなった。
- 国際ワークショップにおける意見交換;1月に、国立民族学博物館でヨーロッパ人類学に関する国際ワークショップ(ヨーロッパ人類学の地平)を開催し、内外の研究者とともに、近代ヨーロッパのソシアルなる概念を検討した。ワークショップの経費の一部は、本科研から支出し、本科研の研究成果も議論にのせて意見交換した。
ベルリンにおける調査では、現代の都市再生プロジェクトが、行政と地域住民、民間セクターの協力関係のもとに、地区の学校、商店街や移民アソシエーション、会社等、多様な団体を組み込んで展開していることが明らかになった。また、市民運動のひとつの系譜として保育園運動が注目されること、さらに今日の新たな展開として多文化教育を担う保育園の動きがあることが明らかになった。これらは本研究のテーマに関して、さらに深く検討する余地があり、23年度以降の調査でも、焦点のひとつに加えていく見通しができた。また、国際ワークショップを介して、ヨーロッパと日本の研究者ネットワークを格段に拡大することができた。







