アジア、ヨーロッパ、アフリカに関わるテキスタイル・グローバリゼーションの研究(2011-2013)
目的・内容
本研究は、現在アジア、アフリカにおいて民族衣装の素材として広く使用されているプリント更紗が、インドネシアやインドの伝統的染織技法とデザインをもとにして、ヨーロッパの植民地支配を背景にしたグローバルな交易と産業革命による技術革新によって創出され、広く展開してきた歴史的経緯を、サンプル帳を始めとする資料の検討によって実証的に明らかにするものである。本研究を通して、私たちが経験する伝統工芸の変革と文化の創出の場面におけるグローバル化の功罪などの本質的意義について批判的視座を提示することを目的とする。
活動内容
2012年度実施計画
1.(研究課題1)(研究課題2)
- プリント更紗のサンプル帳の全体像をつかみ、次年度以降の調査のためにサンプル帳を選択するためのサーベイを行う。調査地は、ロッテルダム世界博物館(オランダ)、フリスコ資料室(オランダ)、ABCワックス資料室(イギリス)、グラールス博物館(スイス)、アントワープ博物館(ベルギー)である。いずれのサンプル帳も、(研究課題1)と(研究課題2)の両方に関わるプリント更紗資料が含まれる可能性があるために、資料の見落としがないよう吉本、金谷が共同で作業にあたり、写真データとして記録する。調査期間は8月に20日間×2人である。
- プリント更紗のサンプル帳の写真データから翌年度の調査対象を選定する。
2.(研究課題3)
- 国立民族学博物館に2010年に収蔵された旧大阪府産業デザインセンター所蔵の輸出繊維商品関係資料の調査に先立って、整理検討を行う。当該資料は、博物館図書室で整理を待っている段階にあり、閲覧・活用が困難な状態にある。そのため調査に先立って、資料リストを参照して必要資料の発見と整理を行う必要がある。研究補助者を雇用し、資料の整理を行う。また、必要に応じて旧大阪府産業デザインセンターの元資料管理者に照会を行う。
- 整理が終わった資料から、画像データを作成する。
- 東アフリカ向けのプリント更紗の意匠登録関係の資料をもとに、記載された繊維会社名のリストアップを行い、会社の概要について資料を収集する。
2011年度活動報告
8月に、吉本、金谷はオランダ、ベルギーにおいて19世紀後半から20世紀初頭にかけてプリント会社が作成したプリント更紗のサンプル帳の調査を行った。フリスコ社の所蔵する108点のサンプル帳と、ロッテルダム世界博物館の所蔵するサンプル帳7点の合計115点のサンプル帳について重点的に調査を行い、画像の電子データの撮影、文字資料の一部読解を行った。また、アントワープ服飾博物館、ロッテルダム世界博物館、ライデン大学においては専門家と意見交換を行った。調査の結果、サンプル帳のなかに(1)東アフリカ向けのプリント更紗製品のサンプル、(2)英領インドで収集された染織品、(3)東アフリカで収集された初期カンガのサンプル、(4)インドネシア向けイミテーション・バティックのサンプルを発見することができた。
この研究の成果については、金谷が2月に国立民族学博物館で開催された国際シンポジウム「Consuming Textiles through Their Uses and Reuses」にて「Imprinting Indian design on African Kanga Cloth」という題目で発表した。また、『現代インド研究』誌に研究論文を執筆、投稿した。
国立民族学博物館所蔵の、旧大阪府産業デザインセンターの輸出繊維商品関係資料については、整理と閲覧を行い、一部画像の電子データを撮影した。







