国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

ベトナム中部地域におけるゴング文化の動態――楽器の製造・流通に着目して(2012-2013)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|研究活動スタート支援 代表者 柳沢英輔

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究では、東南アジアにおけるゴング文化の総合的な理解に向けた一歩として、ベトナム中部地域におけるゴング文化の動態を、楽器の製造・流通に着目して明らかにする。具体的には、ベトナム中部高原コントゥム省、ジャライ省および中部沿岸部クアンナム省を主な調査対象地とし、ゴングの製造・流通に焦点を当てたフィールド調査を実施することでその実態を明らかにし、当該地域のゴング文化が抱える問題について考察することを目的とする。

活動内容

2013年度活動報告

本年度は、前年度ベトナムで行ったフィールド調査で得たデータ(映像資料を含む)を分析して、キン族の鋳造によるゴング製作の詳細に関する論文としてまとめた。同論文は、国立民族学博物館研究報告誌に投稿し、2014年3月に出版された。また5月に国立民族学博物館で行われた研究会、および、11月に静岡文化芸術大学で行われた東洋音楽学会大会において、現地で撮影した映像を用いて研究成果の一部を発表した。12月には、イギリスの大英図書館、フランスのケブランリ美術館などにおいて、ベトナムのゴング文化に関する資料を収集し、複数の研究者と意見交換を行った。また前年度ベトナムで調査・撮影を行ったジャライ族の墓放棄祭に関する映像を編集して、民族誌映画「Po thi」を完成させた。同作品は、2014年3月にエストニアで行われた11th Tartu World Film Festivalに入選し、現地での作品上映とディスカッションに参加した。同作品は、今後も海外の国際民族誌映画祭などに積極的に出品する予定である。
以上より、東南アジアにおけるゴング文化の総合的な理解に向けた一歩として、ベトナム中部地域におけるゴング文化の動態の一端を、とくにゴングの製作・流通の視点から明らかにすることができた。今後は、ベトナム中部地域のゴングの流通に関してさらなる研究を実施し、論文としてまとめる予定である。

2012年度活動報告

2012年度は、当初の計画通りベトナム中部地域でゴングの製造と流通について現地調査を行った。中部クアンナム省では、ゴング製作工房においてゴングの製作工程について調査を行った。ゴングの製作工程をビデオカメラで記録し、職人への聞き取り調査を行うことによって、ゴングの製作について詳細なデータを得ることができた。またベトナム中部高原のコントゥム省、および、ジャライ省の複数の少数民族村落で、ゴングの所有者、調律師などに対し、ゴングの流通に関して聞き取り調査を行った。ゴングの購入先は、他村のゴング所有者から直接購入した事例が多くみられた他、ゴング調律師が各村落を回ってゴングセットの売買を行っていることも確認した。以上より、当該地域におけるゴング文化の動態について、その概要を把握することができた。