国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

墳墓からみたインダス文明期の社会景観(2014-2017)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(B) 代表者 寺村裕史

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究は、インダス文明期の社会構造理解を深化するために、インダス文明期の墳墓に焦点を当て、その形状・立地場所や埋葬形態などを当時の社会構造と関連付けて解明することを目的とする。
研究代表者は総合地球環境学研究所で行なった「環境変化とインダス文明」プロジェクトにおいて、インドの2ヶ所で日本隊として初めてのインダス文明遺跡の発掘調査を担当し、調査及び分析等を主導した。従来より指摘されている様に、装身具や印章、土器等の遺物からインダス文明期の交易ネットワークの研究を進めたが、ネットワークの背後にあるインダス文明期の社会構造は、考古学的にはほとんど理解が進展していないことが判明した。
そこで、墳墓および埋葬という社会的行為から当時の社会景観を再構築し、最終的にはインダス文明における「文明」とは何かを考察する。

活動内容

◆ 2015年4月より転入

2016年度活動報告

本年度は、本研究課題の研究活動の一部として、研究協力者であるアジットプラサード教授らと共同発表という形で、7月にイギリスで開催された23rd EASAA [European Association for South Asian Archaeology and Art] Conference (2016, Cardiff, England)において、これまでのダネッティ遺跡での調査成果を中心に ”Cenotaphs of Dhaneti, Kachchh, and their Cultural Context” という題目で研究発表をおこなった。
また、ダネッティ遺跡での地中レーダー(GPR)探査結果をもとに、アジットプラサード教授を中心とするM.S. University of Barodaのチームが、2017年1月~2月にかけてダネッティ遺跡の発掘調査を実施し、その調査に参加すると共に、土坑墓の3次元計測など出土遺構のデータ記録作業を実施した。
ダネッティ遺跡における墓の形態としては、当該時期のある程度一般的な特徴を持つといえるが、出土した土器は、カッチ地方やグジャラート州北部で報告されている土器とは様相が異なる。そうした盛期ハラッパー文化期よりも少し古い時期の埋葬形態や副葬品としての土器に関する貴重な情報を得ることができたことは、本研究課題にとっても有用な成果であり、今後論文等にまとめ、発表していきたいと考えている。
また、3年間の研究成果の概要をまとめた報告書の、執筆ならびに編集作業を現在実施している途中であり、29年度に製本・印刷をする予定にしている。

2015年度活動報告

本研究は、インダス文明期の社会構造理解を深化するために、インダス文明期の墳墓に焦点を当て、その形状・立地場所や埋蔵形態などを当時の社会構造と関連付けて解明することを目的としている。
平成26年度にインド側(グジャラート州考古局ならびにラージャスターン・ヴィディアピート大学)と締結したMOU(研究交流の覚書)にもとづき、27年度は2016年1月~2月にかけてグジャラート州カーンメール遺跡の発掘調査を、昨年度に引き続き実施した。
城塞南側のトレンチにおいては、ちょうど南壁の中央部分において、両側の石積みとは異なる積み方がなされた遺構を確認した。現時点では、この箇所は建造当初のゲート(城門)の可能性が高いと判断している。また、そのすぐ西側(左側)には、壁がせり出し部屋のような区画が設けられていることから、門のすぐそばに門衛所のような機能を持った施設が付設されていた可能性もある。以前の調査において、カーンメール遺跡ではゲートが確認できていなかったが、今回の調査でゲートを検出できたことは、城塞への出入り口がどこに設けられていたのかが明らかになった点において、大きな成果であると考えている。
また、同じグジャラート州ダネッティ遺跡においては、墳墓ならびに土壙墓の位置・分布範囲をGPSにより記録し、並行して地形測量・GPR(地中レーダー)探査を2016年2月に実施した。探査成果に関しては、現在分析途中であるが、マウンドの中央部分に土壙と思われる異常応答がみられ、墓の可能性が考えられる。当遺跡における墓の配置や、マウンドの形態に関して重要な情報が得られたのは、大きな成果である。
また、上記調査と並行して、インダス文明期の墓に関わる遺跡の集成作業も継続しておこなっている。