国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

日本国内の民族学博物館資料を用いた知の共有と継承に関する文化人類学的研究(2014-2017)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|若手研究(A) 代表者 伊藤敦規

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究は、フォーラム化する民族学博物館と文化人類学の趨勢を加速化させる最先端の学術調査を実施することで、新たな理論的展望を拓くことを目的とする。具体的には、日本国内の複数の民族学博物館が所蔵する米国先住民ホピ製木彫人形資料を対象として、研究代表者、所蔵機関担当者、資料を制作し使用してきた人々(ソースコミュニティ、以下SC)の3者で熟覧を行う。既存の資料情報や資料分類を現代のSCにおける文化的文脈に則した見解と照合することで、二つの異なるコンテクストにおける知(資料情報・伝統的知識)の継承の実態を検討する。加筆・修正した情報と熟覧の様子はデジタル化してまとめて両者へ還元し、さらなる知の継承の展開を図る。

活動内容

2017年度実施計画

2016(平成28)年度に引き続き、これまで実施した資料熟覧調査の動画データについては引き続き文字起こしをし、熟覧者と協働編集作業を進めることでカルチャルセンシティビティへの配慮を行い、翻訳作業を進める。それが済んだ段階で、成果報告書にまとめ、査読付き学術雑誌に投稿して出版・公開を目指す。加えて、資料熟覧調査の実施に不十分がある場合には、伝統的知識保持者を対象機関に招聘し、補足的な資料熟覧を実施する。
なお、所属機関(国立民族学博物館)および連携機関(天理大学附属天理参考館)で、本プロジェクトのテーマに関連する展示会を企画することになった(国立民族学博物館:特別展(仮題)万博資料収集団、天理大学附属天理参考館:企画展(仮題)アメリカ先住民資料展示)。つまり、本プロジェクト最終年度には、学術出版やソースコミュニティとの成果の共有だけではなく、展示会を通して広く一般に成果を公開できそうである。

2016年度活動報告

3年目となる2016(平成28)年度は、招待講演や国際学会等での口頭での研究発表(14本)、5本の短文エッセイの執筆、1本の査読付き論文の刊行、2本の査読付き編著の出版を行った。
本年度もほぼ計画通りに研究を実施した。
主な実施内容は、第一に、専門的知識を有する宗教指導者やアーティストの日本の博物館への派遣とそこでの資料調査である。4月と10月に、それぞれ3名と1名の米国先住民ホピの宗教指導者らを広島県福山市松永はきもの資料館に招聘し、収蔵する324点の木彫人形の熟覧調査を行った。第二に、連携機関との情報共有であり、昨年度(平成27年11月)に資料熟覧調査を実施した愛知県犬山市の野外民族博物館リトルワールドにて、プロジェクトの進捗について公開講演会を開催した。第三に報告書や論文の執筆と刊行であり、査読付き学術雑誌(『社会人類学年報』)に投稿した論文が採択・出版し、『国立民族学博物館調査報告』に投稿した編著が二冊採択・出版した。

2015年度活動報告

2年目となる2015(平成27)年度は、4月と11月にそれぞれ2週間程度の期間で資料熟覧者の招聘を行い、国立民族学博物館、リトルワールド(愛知県犬山市)、天理大学附属天理参考館(奈良県天理市)での資料熟覧調査を実施した。
また、国際ワークショップを2度主催した(4月:『資料熟覧――資料熟覧のためのソースコミュニティ招聘プロセスと人類学的ドキュメンテーションの検討』、2月:『フォーラム型情報ミュージアムのシステム構築に向けて――オンライン協働環境作りのための理念と技術的側面の検討』)。
その他の国際ワークショップでの発表を含め、2カ国4機関での熟覧調査、13度の研究発表・招待講演・ソースコミュニティにおける現地報告会を行った。また、4本の論文・報告書・エッセイの執筆を行った。さらに、国立民族学博物館のフォーラム型情報ミュージアムプロジェクトの機会を利用し、これまでに資料熟覧の様子をデジタル記録化したデータを、デジタルビューアにまとめる作業を開始し、そのシステムデザインの監修も行った。

2014年度活動報告

国立民族学博物館が所蔵する米国南西部先住民ホピが制作した木彫人形資料約300体のphotoVR制作を行った。PhotoVR制作では、まず立体資料を0度、30度、60度、90度角においてそれぞれ全周を水平に36分割し静止画を撮影する。それに底面写真を加え、145枚一組のファイルとして加工することで、資料をPC等のモニター上でハンドリングしているように操作することを可能とする(バーチャルリアリティ化)。本研究では(1)ソースコミュニティ(SC)からの招聘を基にした日本国内の博物館での熟覧と、(2)日本に招聘できなかった人々を対象にした現地での擬似熟覧が必須となる。この(2)を円滑に行うためにphotoVRのための撮影と加工を初年度に行った。
10月には計画通りにSCから招聘し、資料熟覧に関する国際ワークショップ(Collection Review: Methodology and Effective Utilization for the Museum and the Source Community)を国立民族学博物館で開催した。別の財源によって招聘した博物館関係の研究者(日本、米国、スコットランド)とともに資料熟覧に関する方法論を議論した後、実際にホピの人々による資料の熟覧を行った。その過程全ては映像記録化した。招聘期間は土日祝日を含む2週間であり、この間に約140点の熟覧が終了した。SCの帰国後は熟覧時の文字起こしと言語のチェック、日本語への翻訳作業を進めた。一部は日本語字幕付きの公開用動画資料としてほぼ完成した。
また、平成27年度に実施予定のリトルワールド(愛知県犬山市)へのSCの派遣について平成27年1月にリトルワールドにて学芸員と打ち合わせを行った。