国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

国立民族学博物館調査報告(Senri Ethnological Reports)

No.61 文化遺産マネジメントとツーリズムの持続可能な関係構築に関する研究

2006年3月22日刊行

西山徳明 編

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刊行の目的および意義
 編者は国立民族学博物館先端民族学研究部の客員教員を2004年まで務め、自然遺産や文化遺産を資源とするツーリズム開発についての研究を進めてきた。とくに2002 年から2004 年までは「文化遺産管理とツーリズムに関する研究」と題する共同研究会を主催し、その1 年目の成果は、『文化遺産マネジメントとツーリズムの現状と課題(SER No.51)』として刊行済みである。この報告書では、文化遺産のマネジメントに対するユネスコ等国際社会の認識が、この四半世紀の間に「遺産と訪問者(ツーリスト)の関係制御」から、「遺産とローカルコミュニティ(ホスト)と訪問者(ゲスト)の関係構築」へと大きくシフトしてきていることをふまえ、ツーリズムを切り口に「何をもって文化遺産とするか」あるいは「誰にとっての文化遺産か」といったこれまで曖昧にされていたマネジメントの対象や主体に関する論考を示した。具体的には、その対象を「集落・町並み遺産」「都市遺産」「考古学的遺産」「自然遺産」に4 分類した事例研究12 編によってヘリテージ・ツーリズムのマネジメントに関わる現状と課題を整理した。
 これに対し本報告書では、都市計画学・観光開発論・文化財保存行政・文化人類学・環境保全学・社会学等の多様な専門分野における文化遺産マネジメントに関する国内外の先端的な議論をレビューしつつ、一定のマネジメント・モデル構築をめざした共同研究会後半2 年間の成果を主にまとめたものである。本研究報告が特に目的とするのは、まず、近年用語として台頭しつつある「文化遺産マネジメント」という概念について、国際的議論や日本の文化財保護の視点から再検証し今後の議論の礎を築くことである( I 部)。そしてもう一つの目的は、この文化遺産マネジメントとそれに不可欠なツーリズムとの持続的関係構築のモデルを模索することであり、そのためにまずは海外のマネジメント事例やそこでの議論の展開状況を把握し( II 部)、続いて国内外における実際のマネジメントモデルや事例を示した(III 部)。
 今後は日本という国家の文化的な存在意義を国内外に向けて説明していく必要が出てくると考えられるが、本研究成果は、その際重要となる文化遺産マネジメントの将来に大きな示唆を与えるものと考える。

目次
序文
西山徳明

第 I 部 文化遺産マネジメント概念の展開
第1章 開発途上国における地域開発問題としての文化観光開発
  文化遺産と観光開発をめぐる議論の流れと近年の動向
山村高淑
第2章 文化財の創造的活用と伝統的建造物群保存地区における観光
  普遍的内発性及び三つの次元からみた文化財の活用と観光
江面嗣人

第 II 部 諸外国に見る文化遺産とツーリズムのマネジメント
第3章 タイおける文化遺産管理とツーリズム
  スコータイ歴史公園を事例として
橋爪紳也・神田孝治・清水苗穂子
第4章 多元文化社会における文化遺産マネージメント
  マレーシアにおける世界遺産登録をめぐって
宇高雄志
第5章 エコツーリズムにおける文化遺産の価値
  カメルーン共和国、ティカールの事例
下休場千秋

第 III 部 文化遺産マネジメントとツーリズムの持続的関係構築への試み
第6章 世界文化遺産地域における持続可能な開発に関する研究
山口しのぶ
第7章 自然遺産管理とツーリズムが共存する仕組み
小林英俊
第8章 生態学的アプローチによる文化遺産の再生に関する研究
  大覚寺大沢池を題材に
真板 昭夫・河原 司・海津 ゆりえ・松岡 拓公雄
第9章「オープンソースによる自律的観光
  デザインプロセスへの観光客の参加とその促進メカニズム
敷田麻実・森重昌之

 
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(No.1~No.43は非売品)