国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

国立民族学博物館研究叢書

[4]国家のなかでの狩猟採集民 カラハリ・サンにおける生業活動の歴史民族誌

2002年12月27日刊行

著者:池谷和信

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孤立した狩猟採集民のイメージは、毛皮をめぐるエスノネットワークの崩壊とともに形成されたものだった。
植民地時代の空白の歴史を復元し、「歴史のなかのサン社会」を提示。
文化生態学と社会史を統合する視点から描かれる新たな狩猟採集社会像。
目 次
まえがき

[第1章]序論
第1節 ◆ 文化人類学における「カラハリ論争」
1.「カラハリ論争」の展開
2.サンの生業研究の動向
3.研究史のなかでの問題点
第2節 ◆ 研究の枠組み
第3節 ◆ 研究目的と方法
第4節 ◆ 本書の構成
第5節 ◆ 政府の諸政策、3つの調査地区(モラポ,カデ,ニューカデ)、およびエスニック・グループの概説
1.政府の諸政策
2.3つの調査地の概観
3.エスニック・グループの概説


[第2章]バクウェナ首長国(1831~1884年)、イギリス植民地(1885~1966年)、独立直後(1967~1980年)の政策とカラハリ中部の生業活動
第1節 ◆ 19世紀のバクウェナ首長国における生業活動
第2節 ◆ イギリス植民地時代における政治経済状況と生業活動
1.バクウェナ・リザーブの中心と周辺
2.1930年代における税としての毛皮の状況 ─聞き取り資料の分析から─
3.1950年代の農場と鉱山への労働力移動
4.1960年代の毛皮交易と生業複合
5.まとめ
第3節 ◆ 独立直後における生業活動
第4節 ◆ まとめ


[第3章]政府の定住化政策とモラポの生業活動(1981~1995年)
第1節 ◆ 乾季の遊動キャンプにおける移動牧畜
1.移動牧畜のルートからみた3つの遊動域
2.人とヤギからみた集団の分裂・統合
3.キャンプ地の移動の制限要因
第2節 ◆ 乾季の遊動キャンプにおける狩猟採集・牧畜複合
1.家屋の配置,食生活,スイカの貯蔵
2.狩猟採集の技術と実際
3.ヤギの管理技術と委託関係
第3節 ◆ 雨季の本村における乾燥農耕
1.農地の分布と利用
2.農業労働
3.耕地面積と収穫量
第4節 ◆ 移動牧畜の時系列的分析
第5節 ◆ まとめ


[第4章]政府の定住化政策とカデの生業活動(1981~1995年)
第1節 ◆ 定住化のプロセスと居住地移動
第2節 ◆ 狩猟採集
1.猟法と狩猟対象
2.猟法と猟期
3.狩猟集団と家畜の構成
4.犬猟の実際と猟場の利用形態
5.動物を誘導する騎馬猟
6.商品としての毛皮を求める罠猟
7.商品経済化と狩猟活動
第3節 ◆ 農耕牧畜
1.ヤギ飼養の技術とヤギの社会経済的役割
2.乾燥農耕の技術と農業経営
第4節 ◆ 道路工事・民芸品生産への就業
1.ボツワナ政府の地域開発政策と経済成長
2.道路工事への就業
3.民芸品生産への就業と民芸品の流通
4.生業全体のなかでの道路工事と民芸品生産
5.まとめ
第5節 ◆ 生業活動と社会変化


[第5章] 政府の移住政策とニューカデの生業活動(1996~1999年)
第1節 ◆ 南部アフリカにも及ぶ先住民運動の動き
第2節 ◆ 移住を進める政府と住民との交渉経緯(1986~1997年)
第3節 ◆ 移住プロセス(1996~1998年)と移住の要因
第4節 ◆ 移住した人々の生業活動
1.住宅団地の形成にともなうサンの対応
2.牛の導入にともなう生業の変化
第5節 ◆ 移住を拒否する人々の生業活動
1.リザーブ住人が参与する移住反対の活動
2.リザーブ内での生業
第6節 ◆ まとめ


[第6章] 結論:国家政策とサンの生業活動の変容
第1節 ◆ 植民地時代の政策とカラハリ中部の生業活動
第2節 ◆ 政府の定住化政策(1981~1995年)とサンの生業活動
第3節 ◆ 移住政策と1996~1999年のニューカデの生業活動 ─牛の導入─


注釈
あとがき
参考文献
索引