国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

国立民族学博物館研究報告 1992 17巻3号

目 次
永遠の未開文化と周辺民族
―近代西欧人類学史点描―
清水昭俊
417
カメルーン北部・フルベ族の挨拶の言語表現
江口一久
489
タイにおける共同体文化論の潮流
チャティップ・ナートスパー
523
An Overview of Igbo Oral Literature
Onuigbo G. NWOYE
559
An sujet de l'origine des Peuls, d'après les légends
Galina V. ZUBKO
601
彙 報
 
621
国立民族学博物館研究報告寄稿要項
 
623
国立民族学博物館研究報告執筆要領
 
624


BULLETIN OF THE NATIONAL MUSEUM OF ETHNOLOGY Vol. 17 No. 3 1992

SHIMIZU, Akitoshi
The Eternal Primitive Culture and Peripheral Peoples: A Historical Overview of Modern Western Anthropology
417
EGUCHI, Paul Kazuhisa
Greetings of the Fulbe of Northern Cameroon
489
NARTSUPHA, Chatthip
The Community Culture School of Thought in Thailand
533
NWOYE, Onuigbo Gregory
An Overview of Igbo Oral Literature
559
ZUBKO, Galina Vasilievna
An sujet de l'origine des Peuls, d'après les légends
601


 

永遠の未開文化と周辺民族
―近代西欧人類学史点描―
清水 昭俊*
The Eternal Primitive Culture and peripheral Peoples:
A Historical Overview of Modern Western Anthropology
Akitoshi SHIMIZU
 
*国立民族学博物館第4研究部
Key Words:primitive-oriented, tradition-oriented, humanism, peripheral peoples, Western anthropology
キーワード:未開志向,伝統志向,人文主義,周辺民族,西欧人類学

1 序
2 現代の人類学と「未開」
2.1 「未開」の消滅,「未開」研究の消滅?
2.2 「未開」への学説史的関心
2.3 現在の「未開」研究
3 「未開」概念を支えた方法と理論
3.1 「未開」概念の持続
3.2 実証主義人類学の視野限定
3.3 構造機能主義的社会観
3.4 民族誌的現在
3.5 歴史記述的な解釈と人文主義
4 永遠の未開文化
4.1 「永遠の未開文化」観
4.2 「永遠の未開文化」と博物館
4.3 通文化的比較と一般理論
5 客観主義から人文主義へ
5.1 客観主義と人文主義
5.2 文化相対主義の三つの位相
5.3 文化相対主義のパラドックス
5.4 相対主義の到達した客観主義
5.5 一般理論に対する疑問
5.6 エティックと西欧のイーミック,民族誌に対する疑問
6 人文主義と異文化志向――「永遠の未開文化」観その後
6.1 「反-反相対主義」,文化批評としての人類学
6.2 人文主義と「他者」の構成
6.3 西欧人類学の西欧自民族中心主義批判
6.4 非西欧人類学――新たな客観主義の可能性
6.5 「他者」からの批判
7 現地の「現実」と外部による認識の相互作用
7.1 書物の観点,フィールドの観点
7.2 平等社会論
7.3 平等社会の歴史的形成
7.4 狩猟採集民論争
8 周辺民族
8.1 パラダイムの転換
8.2 世界的ネットワークと周辺
8.3 周辺民族と歴史――民族誌の読み直し
8.4 諸社会のローカル・ネットワーク
8.5 進化的価値観の共時的現実性
8.6 ローカル・ネットワークと世界的ネットワーク
8.7 周辺民族研究の視点
9 おわりに

 

カメルーン北部・フルベ族の挨拶の言語表現
江口 一久*
Greeting of the Fulbe of Northern Cameroon
Paul K. EGUCHI
 
*国立民族学博物館第3研究部
Key Words:Fulbe, greeting, West Africa, formula, jam
キーワード:フルベ族,挨拶,西アフリカ,定型句,ヂャム(jam)

0. はじめに
1. フルベ族の社会の伝統的考え方と挨拶行動
2. だれがだれに挨拶をはじめるか
2.1. 年齢,世代差による上下関係
2.2. 男性と女性
2.3. 支配者と非支配者
2.4. イスラム教における上下関係
2.5. 貧富の差
2.6. 現地の人と外来者
3. どこで挨拶をするか
3.1. 「門前(yolnde)」
3.2. 出入口の小屋(zawleeru)
3.3. 日除け(danki)
3.4. 居室(suudu)
4. 挨拶の距離と身ぶり
4.1. 挨拶する両者の関係の上下
4.2. 身ぶりとしぐさ
5. 挨拶の言語表現
5.1. であい頭から相手の祝福にいたる部分
5.1.1. 「アッサラーム・アレイクム
5.1.2. 相手に接近するときの「アッサラーム・アレイクム
5.1.3. 仕事をしている人に接近するときのことば
5.1.4. であい頭の祝福
5.2. 儀礼的ニュースの交換
5.2.1. 相手自身,相手の家族,などの平安に関する問い
5.2.2. 時にあわせた挨拶
5.3. 別れの文句
5.4. 別れ際の相手の祝福
6. 挨拶表現のことば遊び
7. おわりに
7.1. 借用語と異部族との共生
7.2. 社会変化と挨拶
7.3. キネシクスの可能性

 

タイにおける共同体文化論の潮流
チャティップ・ナートスパー*
The Community Culture School of Thought in Thailand
Chatthip NARTSUPHA
 
*チュラロンコーン大学,バンコク
Key Words:Thai village, Thai culture, Thai thought, anarchism, populism
キーワード:タイ村落,タイ文化,タイ思想,アナーキズム,ポピュリズム

Ⅰ.はじめに
Ⅱ.共同体文化論の主要な思想
Ⅲ.共同体文化論の起源
Ⅳ.共同体文化論の言説の分析と評価
1.アナーキズム的性格
2.タイ社会におけるアナーキズムの重要性
3.アナーキズムの階級基盤と同盟者
4.タイ社会における共同文化をモデルにしたアナーキズム成功の条件


An Overview of Igbo Oral Literature
Onuigbo G. NWOYE*
イボ族口承文芸概説
オヌイグボ・G・ヌウオイエ
 
*University of Benin, Nigeria
Key Words:Igbo,oral literature, West Africa, folktale, song
キーワード:イボ族,口承文芸,西アフリカ,昔話,歌


An sujet de l'origine des Peuls, d'après les légends
Galina V. ZUBKO*
 
*Visiting Professor, National Museum of Ethnology
Key Words:Fulbe, origin, oral tradition, Moslem, nomad
キーワード:フルベ族,起源,口頭伝承,イスラム教徒,遊牧民