国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

国立民族学博物館研究報告 1996 21巻4号

目 次
カナダ・イヌイットの社会・経済変化
-ケベック州のイヌクジュアク村の事例を中心に-
岸上伸啓
715
韓国社会における旅芸人の受け入れられ方
朴 銓烈
777
ポストモダン人類学の代価
-ブリコルールの戦術と生活の場の人類学-
小田 亮
807
記録されなかった出生
-人口人類学におけるシミュレーション研究-
木下太志
877
Effects of Nostalgia: The Discourse of Decline in Periya Mēlฺam
Music of South India
Yoshitaka Terada
921
彙 報

941
国立民族学博物館研究報告21巻総目次

952
国立民族学博物館研究報告寄稿要項

953
国立民族学博物館研究報告執筆要領

954


BULLETIN OF THE NATIONAL MUSEUM OF ETHNOLOGY Vol. 21 No. 4 1996

KISHIGAMI, Nobuhiro
Socio-Economic Change in Canadian Inuit Society: The Case of Inukjuak Village, Nunavik (Northern Quebec), Canadas
715
PARK, Jeon Yull
The Social Acceptability of Strolling Players in Korea
777
ODA, Makoto
The Price of Postmodern Anthropology
807
KINOSHITA, Futoshi
Uncounted Births: Estimating the Fertility of Tokugawa Peasants from Shumon Aratame-cho
877
TERADA, Yoshitaka
Effects of Nostalgia: The Discourse of Decline in Periya MēỊam Music of South India
921




カナダ・イヌイットの社会・経済変化
-ケベック州のイヌクジュアク村の事例を中心に-
岸上 伸啓*
Socio-Economic Change in Canadian Inuit Society: The Case of Inukjuak Village, Nunavik (Northern Quebec), Canada
Nobuhiro KISHIGAMI
* 国立民族学博物館第1研究部
Key Words: Canada Inuit,economic change,hunter support program of casheconomy,food sharing
キーワード:カナダ・イヌイット、経済変化、狩猟者支援プログラム、貨幣経済の影響、食物分配

1 はじめに
2 社会変化に関する仮説
3 現代の大規模イヌイット村落の歴史と現状
(1) ケベック州極北地域の歴史とイヌクジュアク村の形成と展開
(2) イヌクジュアク村の1996年の経済構造
4 イヌクジュアク村における食物分配システムの変化と持続
(1) 1940年代のキャンプ集団と食物分配システム
(2) 1990年代の食物分配
5 狩猟者支援プログラムによる食物分配システム
(1) 狩猟者支援プログラム
(2) イヌクジュアク村における狩猟者支援プログラムの運用
(3) 狩猟者支援プログラムの効果と評価
6 ヌナビク・イヌイット社会におけるマキビクの経済開発計画とその実施
7 カナダ・イヌイット社会の経済変化とその検討析
(1) カナダ・イヌイット社会の経済変化
(2) イヌクジュアク村の生業と食物分配はどのように機能しているか
(3) 狩猟者支援プログラムの効果はどうであったか
(4) ヌナビク食品プロジェクトは何を意味するか
(5) 経済プロジェクトの実施とイヌイット社会の変化
(6) 仮説の提起
8 結語


韓国社会における旅芸人の受け入れられ方
朴 銓烈*
The Social Acceptability of Strolling Players in Korea
Jeon Yull PARK
* 韓国中央大学校
Key Words:strolling player, kwangde, Ansungkun, Kadozuke, beg rice
キーワード:旅芸人,クヮンデ(広大),安城郡,門付け,乞粒

Ⅰ はじめに
Ⅱ 旅芸人の時代的流れ析
1 瓢箪をあやつり踊る旅芸人
2 散楽と五伎の旅芸人
3 青山別曲の旅芸人・乞食者詠の旅芸人
4 観劇詩に映った近世の旅芸人
Ⅲ 旅芸人の様々な姿
1 信仰儀礼を標榜する旅芸人
1) 地神を踏み福を招き
2) 仏教の名を借りて
2 歌い・踊り・戯れる旅芸人
1) 歌舞音曲の楽しみ
2) 曲芸の楽しみ
3) 仮面劇や人形劇の楽しみ
Ⅳ 拒みつつ受け入れられる旅芸人
1 拒否される旅芸人
2 公演に許可がいる芸能
3 皆に好かれる旅芸人の理想像
Ⅴ 変貌しつつある旅芸人の姿


ポストモダン人類学の代価
-ブリコルールの戦術と生活の場の人類学-
小田 亮*
The Price of Postmodern Anthropology
Makoto ODA
* 成城大学,国立民族学博物館共同研究員
Key Words:Orientalism, essentialism, politics of identity, invention of tradition, ‘bricolage’
キーワード:オリエンタリズム,資本主義,アイデンティティの政治学,伝統の発明, ブリコラージュ

1 はじめに-問題の所在
2 オリエンタリズムと本質主義
2-1 人類学の危機とオリエンタリズム
2-2 サイード批判の問題点
2-3 民族誌的権威と反リアリズム
3 ポストコロニアルとブリコラージュ
3-1 「伝統の発明」と文化の構築
3-2 断片とブリコラージュ的戦術
3-3 提喩に抗する隠喩/換喩
4 生活の場の人類学へ向けて


記録されなかった出生
-人口人類学におけるシミュレーション研究-
木下 太志*
Uncounted Births: Estimating the Fertility of Tokugawa Peasants from Shumon Aratame-cho
Futoshi KINOSHITA

* 江南女子短期大学,国立民族学博物館共同研究員
Key Words:demographic anthropology, microsimulation, model for reproductive, shumon aratame-cho, Japan
キーワード:人口人類学,マイクロシミュレーション,人口再生生産過程モデル,宗門改帳,日本

1 はじめに
2 研究課題 
3 宗門改帳とその人口資料としての性格
3.1 宗門改帳の由来と記載内容
3.2 宗門改帳から読み取れる農民のライフコース
3.3 宗門改帳の人口資料としての弱点
4 人口再生産過程再現のためのモデル
4.1 シミュレーションの概略
4.2 人口再生産モデルの説明
4.2.1 女子の死亡年齢
4.2.2 有配偶状態
4.2.3 永久不妊率
4.2.4 妊娠
4.2.5 自然流産
4.2.6 出生数の月別分布
4.2.7 乳児の月齢別死亡確率
4.3 出生数の月別分布と月齢別乳児死亡確率
5 シミュレーション結果
5.1 プログラムのチェック
5.1.1 累積死亡数
5.1.2 有配偶率
5.1.3 有配偶率
5.2 有配偶出生率に関するシミュレーション結果
5.3 有配偶出生率のランダムな変動
6 まとめと結論


Effects of Nostalgia: The Discourse of Decline in Periya Mēlฺam Music of South India
Yoshitaka TERADA*
ノスタルジアの政治的作用
-南インドのペリヤ・メーラム音楽における衰退言説-
寺田 吉孝

* 2nd Research Department, National Museum of Ethnology
Key Words:South India, Brahman, Isai Vēlฺālฺar, classical music, nostalgia
キーワード:南インド,ブラーマン,イサイ・ヴェーラーラル,古典音楽,ノスタルジア

Ⅰ  Introduction
Ⅱ The Period of Major Transformation: 1900-1950
Ⅲ Nostalgia and the Discourse of Decline in South India Music
1 Deritualization of Pariya Mēlฺam Music
2 Close Interaction with Karnฺātฺaka Music
3 Discourse of Decline and Institutional Patronage
Ⅳ Counter Interpretations of Periya Mēlฺam Musicians
Ⅴ Concluding Remarks