国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

在学生の研究内容 アレハンドロ・アマヤ・ガルシア 平成24年度 専攻派遣事業研究成果レポート


アレハンドロ・アマヤ・ガルシア

専攻派遣事業研究成果レポート

1. 事業実施の目的
1.ベルリン民族学博物館が所蔵するレクワイ文化の土器コレクション(マセド・コレクション)の調査
2.イベロ・アメリカ研究所の図書館に収蔵されている文献の調査

2. 実施場所
ドイツ連邦共和国ベルリン市
1.Ethnologisches Museum der Staatliche Museen zu Berlin (ベルリン民族博物館)
2.Ibero-Amerikanisches Institut / Preusischer kulturbesitz (イベロ・アメリカ研究所/プロイセン文化遺産)。

3. 実施期日
平成25年2月2日(土)から2月14日(木)

4. 事業の概要
私の研究対象であるレクワイ文化は、ペルー北中部アンカシュ県の高地で成立した先史文化である。アンデス地域の先史文化は、文字を持たないことから、遺構・遺物が、当時の社会を理解するための唯一の手がかりとなる。この場合、発掘調査に基づく情報が最も信頼できることは言うまでも無いが、図像分析においては、出土地不明な博物館コレクションも大きな役割を果たす。ベルリン民族学博物館が所蔵するマセド・コレクションも、現在のカタック市付近に位置する墓地遺跡の盗掘によって形成されたものと言われ、1980年代には、このコレクションのカタログが出版されている。中でも建築内での儀礼を表現した3つの土器は、私の博士論文のテーマである儀礼と建築の関連性をさぐる上で重要な情報を持つと考えられ、今回の調査を立案した。
現地では、幸運にもベルリン民族学博物館のキュレーターであるピーター・ヤコブ氏の全面的協力が得られ、コレクションの詳細な調査を行うことができた。具体的には、土器の写真撮影と、細部の分析を行った。とくに人物の衣裳と頭飾りの表現、建物の構造、建物の装飾に注目しつつ、塑像表現、刻線文様のパターン、塗彩などさまざまな観点から分析を行った。
次に、イベロ・アメリカ研究所の図書館を訪問した。この研究所は、20世紀初頭から、ラテンアメリカの過去や現在に関する重要な文献を所蔵している。特にレクワイ文化に関する入手困難な博士論文と、建築に焦点を当てた未刊行の修士論文に関心を持っており、この研究所ではそれらの文献のコピーを入手した。

5. 本事業の実施によって得られた成果
民族学博物館での土器コレクションの予備分析では、いくつかの点が浮かび上がってきた。まず、衣裳と頭飾りの表現の分析から、異なる半族もしくはリネージがこの建物で行われた儀礼に参加していた可能性が示唆された。次に、建物に関しては、2階建て以上であった点も判明した。さらに刻線文様のパターンからは、建物の壁が泥スリップで覆われ、塗彩やレリーフで装飾されていた可能性が高いことがわかった(図1)。壁面装飾はレクワイ文化に先行してペルー海岸部で確認されているが、保存が難しい湿潤環境下にあるレクワイ地域では、完全な形での検出を期待することはできない。しかし、今回の土器の分析によって、実際には検出できないとしても、複雑な儀礼空間の存在を考える必要があることが明らかになった。
イベロ・アメリカ研究所で入手した文献は、先行研究を位置づけるのに非常に役立った。また、今後フィールドワークを行う上で必要な、よりよい明確な視点を得ることができた。具体的には、Hartmut Tschaunerの未発表修士論文では、建築の型式分類を図面や断面図とともに提示していた。またReichertとWilliamsonの博士論文は、美術史的観点からの分析ではあるが、現在でもレクワイ文化の土器に関する最も優れた研究である。さらに図像要素の包括的な記述がされており、私が今後行っていく建築と儀礼の分析にも役立つと考えられる。
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図 1:標本VA4758。建物は複数の階層構造を持ち、中央にパティオが見える。
儀礼の内容自体は不明だが、それに参加する人々の姿が示されている。