国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

在学生の研究内容

更新日時:2016年5月31日

古沢ゆりあFURUSAWA Yuria

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専攻

比較文化学

指導教員

主指導教員:吉田憲司/副指導教員:寺田吉孝

研究題目/研究キーワード

■研究題目
近代アジアにおける聖母像の現地化 ―フィリピンの民族衣装をまとった聖母像を中心に

■研究キーワード
フィリピン美術、民族衣装と女性表象、自己像と他者のまなざし

研究の概要

「民族衣装をまとった聖母像」とは、それぞれの土地の民族衣装をまとい現地の女性の容貌で表現されたキリスト教の聖母マリアの聖画像であり、特に20世紀以降、アジアの様々な地域に見出すことができます。本研究は、民族衣装をまとった聖母像について、おもにフィリピンを対象に、日本などアジアの他地域との比較も行いつつ、西洋美術(とくにキリスト教図像学)の受容、女性の表象、民族衣装とアイデンティティなどの観点から、その成立の要因と展開の過程を明らかにするものです。
人口の約8割がカトリックのフィリピンでは、聖母像は文化の中で重要な役割をになってきており、美術作品においても多くの作例を見ることができます。植民地時代においてはおもに西洋の様式による聖画像が導入されましたが、近代になると意識的に在来の伝統を反映した作品が作られるようになり、このことには外来文化の受容と変容、また自文化の自覚化が表れていると思われます。一方、近代国家において「民族衣装をまとった女性」像は、国やその国の伝統的要素を象徴するものとしても機能してきており、そこには、社会において女性に与えられた役割や「真正な」伝統文化の創出などが見てとれます。
以上のような観点から、近現代美術の作例や大衆的な聖画像にみられる「現地の聖母」像を調査します。この研究が、現代のアジアにおけるアイデンティティの変化とその社会的・歴史的・文化的背景に関する新たな一提言となればと思います。

研究成果レポート