国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

在学生の研究内容

更新日時:2012年8月8日

今井彬暁IMAI Akitoshi

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村でトレッキングをする観光客とモン族女性のガイド

専攻

地域文化学専攻

指導教員

主指導:横山廣子/副指導:池谷和信

研究題目/研究キーワード

■研究題目
ベトナム北部山岳少数民族モン族社会の労働に関する民族誌的研究

■研究キーワード
ベトナム、モン族、労働、少数民族観光

研究の概要

本研究は、ベトナムの少数民族居住地であるラオカイ省サパ県を調査対象地とし、同地に居住するベトナム53公定少数民族の一つであるモン族の近年の生計維持活動の多様化の実態を明らかにすることを目的としている。
サパ県のモン族は親族や血縁関係を基盤として村落を構成しており、農耕や畜産、衣服製作や家屋建設といった衣食住に関する自足自給の生活を現在も営んでいる。しかし近年のベトナム政府による開発政策の実施や、観光地化および国境を越えた商品作物交易のネットワーク化に起因する貨幣経済の拡大は、同地のモン族の生計維持活動に能動的あるいは受動的な変化を生じさせている。一点目の政府による地域政策は、一方では公的教育の機会や地方行政機関での雇用をモン族に提供しているが、他方ではモン族が慣行的に行ってきた生業形態に変化や制限をもたらしている。二点目に、グローバル化に伴う観光化や国境を越えた商業ネットワークの形成は、村落における親族や血縁に基づく関係から離れた経済的利害に起因する人間関係をモン族の間にも漸進的に浸透させている。
上述のような近年の社会環境の変化に対するモン族個々人の対応は様々であり、既存の社会関係をベースとしながらも、個々人の選択に基づく多様な生計維持活動の方途が模索されている。こうした背景を踏まえつつ、本研究はモン族の生計維持活動の多様化の複雑な実態を明らかにすることを目指す。さらにそれにより、近年の新たな社会環境がモン族の間に生活や生存に関するいかなる利点や問題点を生起させているのかを描写し、ひいては国家の開発政策やグローバル化の影響がモン族にとっていかなる意味を持つのかを彼らの視点から描き出すことを企図している。

研究成果レポート