国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

在学生の研究内容

更新日時:2020年2月4日

今村宏之IMAMURA Hiroyuki

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専攻

地域文化学専攻

指導教員

主指導教員:小野林太郎/副指導教員:福岡正太

研究題目

「護身術」プンチャック・シラットに関する民族誌的研究――インドネシア、ジョグジャカルタの実践者コミュニティを中心に

研究キーワード

プンチャック・シラット、インドネシア、身体技法、実践者コミュニティ

研究の概要

インドネシアには、護身、芸能、宗教的信仰を包含する身体技法が広く見られる。プンチャック・シラットは、そうした身体技法の一部を指す上位概念としてつけられた総称である。インドネシア・プンチャック・シラット協会(1948年設立。以下シラット協会)によれば、プンチャック・シラットには画一的な定義があるとされる。シラット協会は、行政府からの支援を受ける全国規模の組織であり、プンチャック・シラットのスポーツをしての標準化を促進している。

私は、2009年から現在にいたるまで、断続的に、プンチャック・シラットにまつわるエピソードをインドネシアのジョグジャカルタで収集している。とくに草の根でプンチャック・シラットの振興と保全を実施するタントゥンガン・プロジェクト(Tangtungan Project) とその派生団体パスドゥルラン・アンクリンガン・シラット(Paseduluran Angkringan Silat)という民間団体に着目して研究している。この団体の活動に参加するうちに、実践者のあいだでも、プンチャック・シラットに関する理解の仕方は多種多様で、一枚岩とはいいがたいことに気づいた。シラット協会の定義だけでは捉えきれない見解がいくつも見られた。

一方で、インドネシアの日常的な文脈や文学作品においては、シラット協会の見解とも、草の根の民間団体の見解とも異なる意味合いでプンチャック・シラットの語が用いられることがある。本研究では、シラット協会の定義と実践者の語り、そしてプンチャック・シラットと直接的にかかわらない人びとの見解とのあいだに見られる理解のゆらぎを、インドネシアの歴史的・社会的文脈と照らし合わせて検討を試みる。プンチャック・シラットをめぐる諸相をとらえ、分析することは、インドネシアやジャワ文化に関する理解をいっそう深めるものである。

研究成果レポート