国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

在学生の研究内容 中川渚 平成24年度 専攻派遣事業研究成果レポート


中川渚

専攻派遣事業研究成果レポート

1. 事業実施の目的
パコパンパ遺跡出土土器の分析

2. 実施場所
ペルー共和国カハマルカ県チョタ郡パコパンパ村

3. 実施期日
平成25年1月6日(日)から2月22日(金)

4. 事業の概要
本研究は、アンデス形成期(紀元前2500年から紀元前200年)のパコパンパ遺跡を対象として、工芸品製作と階層化がどのように関連しているのかを明らかにすることが目的である。アンデス形成期は、土器や公共建造物が出現し、遠距離交易が活発化する時期であり、階層化が始まる社会であるとされてきた。対象としているペルー北部、パコパンパ遺跡は、金製品を伴う墓が検出されるなど、階層化の痕跡が認められる遺跡である。このような社会で、土器はどのような意味を持っていたのか、土器の製作や利用がどのように階層化と関連しているのかを、実際に発掘調査によって出土した土器の分析を通して明らかにしていく。
今回の調査では、主に製作活動に焦点を当てて土器を分析した。これまでの調査で、すでにパコパンパI(紀元前1200-紀元前800)とパコパンパⅡ(紀元前800-紀元前500)の間に土器製作に関して大きな変化があることがわかっていたが、建築の大きな変化を伴うパコパンパⅠ内での変化や、階層化がより進展していったと考えられるパコパンパⅡ内での変化が不明なままだった。これらの変化を数量で把握するために、土器のタイプ分類、器形分類と破片の数量分析を行った。まず、装飾技法、焼成技法、表面調整技法等、製作技術の属性に基づいて土器のタイプを設定し、完形土器と先行研究を参照しながら器形のバリエーションを把握した。そしてそれらがどのように時期によって変化するのかを、層位変化が最もよく表れていると考えられるグリッドに絞って、そこから出土した破片のカウントと計量をすることで分析した。具体的には、まず1.5平方c㎡以上の全土器片をタイプごとに分類して、カウントと計量を行い、次にこれらの破片の中から口縁部を抽出し、器形分類した後カウントした。最後に各器形をタイプごとにカウントすることで、タイプと器形の関連性についても分析した。
これと並行して、タイプ分類・器形分類のサンプル数の増加と、土器の再利用について分析する目的で、2012年度の発掘調査によって出土した土器の観察を進めた。再利用に関しては、修復孔のある土器に絞って分析したところ、特に再利用される土器タイプに差がないことが明らかとなった。

5. 本事業の実施によって得られた成果
これまでの調査や先行研究によって、パコパンパIとパコパンパⅡの間に土器製作に関して大きな変化があることがわかっていたが、層位発掘によって出土した土器資料を、数量ともに提示するような分析成果はこれまで提示されておらず、大まかな把握に留まっていた。今回の分析では、パコパンパⅠとパコパンパⅡの具体的な変化を、数量で掴むことができ、さらにパコパンパⅠ内での変化、パコパンパⅡ内での変化も見ることができた。また、変化が捉えにくい粗製土器に関して、パコパンパⅠとパコパンパⅡの間に継続性があるのかどうかが課題となっていたが、混和材からは同じ材料を使い続けていたことが明らかとなった。一方で、異なる混和材を使って同様のタイプの土器を製作していたグループが現れることもわかり、ここからパコパンパⅡに入って土器製作の規模が増加したこと、製作グループが2つ以上あった可能性があることが示唆される。今後、今回収集したデータをさらに様々な角度から分析していく予定である。