国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

在学生の研究内容

更新日時:2018年5月9日

荘司一歩SHOJI Kazuho

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専攻

比較文化学専攻

指導教員

主指導教員:関雄二/副指導教員:野林厚志

研究題目

先史アンデスにおける生業と社会組織の相互動態的関係

研究キーワード

中央アンデス、沿岸漁撈民、儀礼的実践、空間、複雑社会

研究の概要

本研究は、アンデス文明形成期前期~中期(紀元前1800~800年)における複雑社会の形成について論じることを目的としている。とくに人間行動の集積として遺跡を捉え、考古学的に考究することで、個々人の行為を通じた集団現象の視点から複雑社会の形成過程を明らかにする。また、これまでの先史アンデスの研究が、公共建造物を中心とした調査から社会複雑化を論じてきたのに対し、本研究は、公共建造物の活動を支えてきた集団が生活していた居住空間をも視野に入れ、社会やイデオロギーの形成を総合的に捉えていく。具体的には、ペルー北海岸のラ・リベルタ県に位置するワカ・ネグラ遺跡を対象とした発掘調査と出土遺物の分析からこれに迫る。その際、単に公共建造物と居住址それぞれの空間における人間の活動を復元し、比較するのにとどまらず、集団の組織化やイデオロギーの形成が両空間における実践活動の総体として実現されるという視座を確保しておくつもりである。

ワカ・ネグラ遺跡は、主に海産資源を利用していた集団の小集落であったと想定されており、石製の壁を持った基壇状の公共建造物と、土製の壁を持った小規模な居住用建造物が報告されている。このように、考古学においては建築などの物質文化を基準として、異なる空間を明瞭に読み取ることができる。そのため、先行研究においても公共建造物と居住用建造物は分断されて考究されてきた。同様に本研究においても、異なる空間として公共空間と居住空間を設定し、便宜的に分別する。しかし、それらを分断するのではなく対比することにより、儀礼活動に代表されるような実践を通じて両者が統合的な関係を保ち、集団を形成したことを明らかにする。

研究成果レポート