在学生の研究内容 玉山ともよ 平成23年度 専攻派遣事業研究成果レポート
玉山ともよ
海外学生派遣事業研究成果レポート
1. 事業実施の目的
博士論文執筆のためのフィールドワーク
2. 実施場所
アメリカ合衆国 ユタ州、ニューメキシコ州
3. 実施期日
平成24年1月25日(水)から 2月4日(土)
4. 事業の概要
博士論文を執筆する上で不可欠な、これまで収集したデータの確認と補足のための調査を行った。
具体的には:
ユタ州立大学において、ウラン鉱山被曝者、特に労働者の補償問題に取り組む社会学者のジョン・アレン博士を訪ねインタビュー調査ならびに文献調査を行った。- ニューメキシコ州の「グランツミネラルベルト」と呼ばれるウラン埋蔵量の豊富な地域における、特にテーラー山付近のウラン鉱山再開発問題において、様々に入り組んでいる土地の境界付近を訪れ、現在の土地利用がどのように行われているのかを確認作業を行った。テーラー山は州の文化財(TCP)として2009年に認定されたが、TCP地域と鉱山付近の境界地域が、先住民居住地、先住民保留地、スペイン系コミュニティー、連邦森林局管理地(FS)、連邦土地管理局所有地(BLM)、州政府管理地と別れている。ロカホンダ鉱山開発計画とラハラメサ鉱山開発計画がこのTCP境界にあり、実際の様相を同州アルバカーキ市の「サウスウエスト調査情報センター(SRIC)」のポール・ロビンソン氏と「安全な環境のための多文化同盟(MASE)」のメンバーであるペトゥーチ・ギルバート氏(アコマ)と一緒に、ロカホンダ鉱山サイトと付近のマウント・テーラー鉱山サイトを訪れ調査した。
- またそのときにバリク・ゴールド社が運営していたミラン市にある「ホームステーク」ウラン精錬所跡を一緒に訪れ、近隣住民にもインタビュー調査をした。現在ホームステークは、連邦環境保護局の「スーパーファンドサイト」という汚染除去の優先地域として指定を受けおり、環境修復過程の途上にあるが、それが精錬所建設前のバックグラウンド基準値(空気・水・土壌)に戻すことが技術的にも不可能だということで、土地家屋の価値、健康、精神的苦痛等の補償問題を住民側がどう求めていくのかという話を伺った。
- ロカホンダ鉱山開発計画が、森林局管轄のシボラ国有林内において、ウランの掘削ドリル試験を行うことが2011年12月に認められたことについて、アルバカーキ市に森林局のブランチオフィスがあり、2011年1月のパブリックコメントとの関連を担当職員にインタビューした。森林局のダイアン・タフォイア氏によると、基本的に1872年の鉱山法に基づき、申請された書類に不備がなければ開発を認めざるを得ないということだった。パブリックコメントを実施し、開発計画に反対の住民がいることは森林局も承知されているが、それが申請されている計画を却下する直接の理由にならないということであった。
- 滞在の最終日に、ニューメキシコ州の州都サンタフェの「ラウンドハウス」と呼ばれる議事堂で、水の安全性についてのプレスカンファレンスが開催され、MASEメンバーよりウラン鉱山開発による地上と地下の両方の汚染についてのプレゼンテーションがあり、短い時間ながら参加することができ他の参加者にインタビュー調査を行った。
- その後、同じくサンタフェのロカホンダ鉱山を運営するストラスモア・ミネラル社のオフィスを訪問することができ、現在のロカホンダ鉱山の進捗状況、水に関する問題、近隣住民との関係等についてインタビュー調査を行った。
5. 本事業の実施によって得られた成果
ユタ州立大学のアレン博士に、"Interaction field Theory"と "Network Analysis"について伺い、私の博士論文において応用可能なところと無理なところがあることがわかり、より深く内容について理解することができた。- テーラー山におけるウラン鉱山開発がどのような実態で行われようとしているのか、実際に訪問調査することによって明らかになったことが数多くあった。サンマテオというスペイン系コミュニティーでは、距離的に鉱山サイトから約5キロと最も近く、牛の放牧もそこで行われているが、むしろ働く場所が増える等の理由で鉱山開発を歓迎する村人が多いということがわかった。よってウラン鉱山開発反対を明確に表明している先住民族トライブとはTCP境界線の問題でも、水利用の問題でも、異なった見解を持っているということが明らかになった。またアコマ保留地内では、ウラン鉱山開発がどのように捉えられているのか、トライブの現在の立ち位置をギルバート氏より聴くことができた。TCP認定の主要推進トライブであったアコマでは、アコマ保留地の上流にあたるテーラー山でのウラン鉱山開発計画による地下水汚染が、直接アコマの農業に多大な影響を与え、文化的にも開発は聖山を冒涜するとのことで反対している。 しかし現在のトライブ政府の立場はトライブのトップであるガバナーが、選挙によらず伝統的な任命制により毎年入れ替わるので、年によっては行政知識のないガバナーが着任することにより、トライブ政府の方針が変わりやすいという深刻な問題があることが指摘された。
- ホームステーク精錬所跡を訪問したことにより、MASEを構成しているコミュニティーグループの一つであるBluewater Valley Downstream Alliance(BVDA)の活動について知識が深まった。
- 連邦森林局は、シボラ国有林におけるウラン鉱山開発について積極的とは言えないまでも、余程の申請書類の不備がない限り開発計画を認める方向で進んでいることが明らかになった。
- 現在のスザナ・マルティネスニューメキシコ州の知事になってから、ウラン関係だけではなく様々な地下資源開発計画が進んでおり、ビル・リチャードソン前州知事時よりもはるかに経済優先、環境政策後退の法案が次々と通っていることが明らかになった。
- ロカホンダ鉱山は、2017年の操業開始を目指して、現在環境影響評価書(EIS)を作成中であり、原子力規制委員会(NRC)に鉱区内に新設する精錬所建設の申請書を2012年度内に提出予定とのこと。ストラスモア・ミネラル社によると、地下水汚染の心配は技術的に克服可能であり、優れた経済効果が見込めることから、地域経済に大きな貢献ができるとのことであった。本開発計画におけるそれぞれのプレーヤー(開発会社、州政府、森林局、先住民トライブ、環境NPO、地域住民等)の異なる立場が鮮明になり分析に役立つデータを得ることができた。
*上記の「事業の概要」の番号1.~6.と「本事業の実施によって得られた成果」の番号は対応している。







