国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

在学生の研究内容

更新日時:2019年10月30日

田中伊佐生TANAKA Isao

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専攻

比較文化学専攻

指導教員

主指導教員:菊澤律子/副指導教員:吉岡乾

研究題目

湖南省湘西土家族苗族自治州における土家語の記述言語学的研究

研究キーワード

土家語、土家族、記述言語学、消滅危機言語

研究の概要

本研究の目的は、中国湖南省湘西土家族苗族自治州北部山間地域で話される土家語の構造を記述言語学の視点から明らかにすることである。
土家族は、中国政府により1956年に認定された少数民族であり、居住地域は湖南省・湖北省・貴州省・重慶市に集中している。土家族固有の言語である土家語は、子音、母音、声調の組み合わせで語の意味が区別される声調言語であり、独自の文字はない。1949年に中華人民共和国が成立してからは、全国的に漢語の普及が促進され、土家族集住地域においても、漢語を教授言語とする教育が実施されている。また、近年、中国では漢語を使用した各種メディアの普及は著しく、土家族集住地域においてもその状況は変わらない。そのような中、土家語の話者は減少傾向にあるとされ、『危機言語の世界地図第3版(Atlas of the World’s Languages in Danger Third edition )』(Moseley, Christopher (ed.), 2010, Paris: the United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)でも、消滅危機言語の一つとされている。
調査対象地域で話される土家語は、少なくとも語彙の面で、他の地域で話される土家語と違いがあるものの、その記述言語学的な研究はない。一方、この地域で日常話される言語としては漢語が主流となっている。土家語話者は高齢者に限られており、かつ、漢語との二言語話者で、同世代の住民とは土家語で話すが、家庭内においても子や孫とは漢語で話すという状況となっている。よって、この地域で話される土家語の一地域変種の構造を記録することは、土家語に関する記述言語学上の意義のみならず、消滅危機言語としての土家語の包括的な保存と復興の視点からも必要である。
本研究では、現地調査に基づき、湖南省湘西土家族苗族自治州北部山間地域で話される土家語の音声・音韻、語彙、文法の諸特徴を分析し、その構造を記述言語学の視点から明らかにする。これによって土家語の言語学的特徴の理解と保存に貢献し、土家語の言語教材や辞書等、現地で必要とされる言語資料作成の基盤を構築することを目指す。

研究成果レポート