国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

世界を食べる日本、日本を食べる世界

総合日本文化研究実践教育プログラム:「食から見た日本文化の国際的受容と日本における文化変容」

 

『日本を食べる世界、世界を食べる日本』世界を食べる日本:周囲の国旗をクリックしてください。『日本におけるペルー料理』 佐藤吉文『日本におけるアメリカ料理』 小谷幸子『日本におけるドイツ料理』 山田香織『日本におけるハンガリー料理』 大塚奈美『日本におけるバングラデシュ料理』 南出和余『日本におけるタイ料理』 岡部真由美『日本における中国料理』 宮脇千絵『中国における日本料理』 長沼さやか『中国雲南における日本料理』 岡晋『モンゴルにおける日本料理』 前川愛『ビルマにおける日本料理』 飯国有佳子『ベトナムにおける日本料理』 佐藤まり子『タイにおける日本料理』 小河久志『インドネシアにおける日本料理』 阿良田麻里子『インドにおける日本料理』 菅野美佐子『バングラデシュにおける日本料理』 南出和余『ヨルダンにおける日本料理』 錦田愛子『イスラエルにおける日本料理』 錦田愛子『イスラエルにおける日本料理』 菅瀬晶子『トルコにおける日本料理』 米山知子『ハンガリーにおける日本料理』 大塚奈美『ドイツにおける日本料理』 山田香織『アメリカにおける日本料理』 小谷幸子『ペルーにおける日本料理』 山本睦


はじめに

グルメ文化華やぐ日本では、現在、巷で世界中の料理が食べられている。インド料理、タイ料理、イタリア料理、中華料理、韓国料理・・・いまや、日本の人々は「世界を食べている」のである。しかし、これらは、しばしば、本場の料理と全く同じものではなく、日本風にアレンジされた各国料理であるといわれる。例えば、一般的にタイ料理の辛さは日本では抑えられている。また、日本の中華料理店では、料理にしょうゆやみりんが使われていることも少なくない。はたまた「たらこスパ」のように、イタリアのスパゲティが積極的に曲解あるいは日本化されることで、新しい文化が創造される例もある。つまり、我々は日本的に解釈された世界の料理を食しているといえる。料理の内容に限らず、食事をめぐる表象にも目をむけてみよう。日本の韓国料理の店で、本来の鉄の箸ではなく、割り箸でだされるという例もある。「食」を切り口にすると、世界のさまざまな文化が日本的に受容されている態様が、目にみえる形で伺える。

一方、日本料理もいまや、世界中で食される時代となった。世界もまた「日本を食べている」といえよう。ところが、日本料理も世界のそれぞれの地域の文化や事情によって、独自の解釈がなされている。たとえば、タイでは、「日本料理」としての餃子が、わさび醤油で食されることがある。また、モンゴルの日本式ラーメン屋で、ヒツジ肉のチャーハンが出されたという報告もある。日本と同じように、他の国々でも「日本料理」という文化は、その国の文脈に即した形で受容されている。

本企画では、そうした双方における「海外料理」に注目し、日本における海外料理の受け入れ方、世界における日本料理の受け入れられ方を、院生それぞれが記し、「世界を食べる日本、日本を食べる世界」という形でまとめる。われわれは、「食」をめぐる、さまざまな表象を日本の側、世界の側の双方向から、見つめる。

異文化が出会うところは、誤解と創造の渦巻く場である。読者は、食をめぐる文化の出会いの場において、誤解や曲解をともないながらも、新しい文化が生起している現場を目にすることとなるだろう。その案内役は、われわれ総研大院生ひとりひとりである。われわれフィールドワーカーは、ディープに「世界を食べ」てきたし、逆に「日本が食べられる」現場に立ち会ってきた経験を豊富にもっている。また、食をめぐる表象に限らず、日本におけるある種のエスニック料理の位置づけや戦略、世界における日本料理のイメージなども見えてくると、なお面白い。このことは、「ワールド・カルチュラル・マーケット」という概念を食文化から捉え、本質主義的理解ではない食文化の流通を提示し得る。

本企画は、民博総研大院生にしかできない試みであると自負している。さまざまなフィールドで調査を行う学生が集い、さらに、院生間の連携も強く、これまでにも、日本で「エスニック料理」と称される多くの食を共に味わってきた。この企画は、そんな院生が食をめぐる文化受容というテーマを人類学の味つけで料理する試みである。

島村一平(滋賀県立大学 人間文化学部 専任講師 総研大OB)
小河久志(総合研究大学院大学 地域文化学専攻 院生)
 
■はじめに:PDF28KB

本企画は、総合研究大学院大学文化科学研究科「魅力ある大学院教育」イニシアティブ事業の中の、e-learning事業の一環として行われた。本事業は、総研大の各専攻を置く大学共同利用機関が保有する学術資料や文献史料をデータベース化し、あるいはそれらを活用したe-learning教材を開発し、学生間の「知的資源共有化」を 図ると共に、世界の、特に日本文化研究者にむけて提供する教材開発プログラムである。事業の詳細は、http://www.initiative.soken.ac.jp/5jigyo/5jigyo_e-learning.htmlを参照されたい。
本企画「食から見た日本文化の国際的受容と日本における文化変容」では、国立民族学博物館を基盤とする2専攻(地域文化学専攻、比較文化学専攻)の学生が、自らのフィールドワークによって収集したデータを教材としてまとめ、日本食を通した比較文化研究を試みる。

[2006年3月(CD-ROM本)刊行]

■全編:PDF3.73MB
第1部:「世界を食べる日本」
日本におけるペルー料理 アホ臭くない 佐藤吉文 344KB
日本におけるアメリカ料理 サンドイッチの日米比較 小谷幸子 328KB
日本におけるドイツ料理 年輪の意味 山田香織 184KB
日本におけるハンガリー料理 ハンガリー料理のスリムアップ 大塚奈美 28KB
日本におけるバングラデシュ料理 バングラデシュ料理こそ「日本的カレー」?! 南出和余 232KB
日本におけるタイ料理 タイ料理回顧録 岡部真由美 36KB
日本における中国料理 「中華料理と「中国菜」似て非なるもの 宮脇千絵 64KB
第2部:「日本を食べる世界」
中国における日本料理 愛のネタはすし飯に乗って 長沼さやか 72KB
中国における日本料理 雲南のお好み焼き 岡晋 192KB
モンゴルにおける日本料理 モンゴルの日本料理はどこで食べる? 前川愛 176KB
ビルマにおける日本料理 日本文化としての居酒屋 飯国有佳子 108KB
ベトナムにおける日本料理 バイクに乗った日本食 佐藤まり子 212KB
タイにおける日本料理 ワサビと餃子の幸福な関係 小河久志 72KB
インドネシアにおける日本料理 Hoka-Hoka Bentoのカニロール 阿良田麻里子 236KB
インドにおける日本料理 なつかしの母の味!? 菅野美佐子 296KB
バングラデシュにおける日本料理 外国人のための外国人による
日本料理INバングラデシュ
南出和余 188KB
ヨルダンにおける日本料理 日本食をめぐるパフォーマンス 錦田愛子 180KB
イスラエルにおける日本料理 お洒落な日本食の願い.... 錦田愛子 148KB
イスラエルにおける日本料理 偽カキノタネ顛末記 菅瀬晶子 244KB
トルコにおける日本料理 トルコ親日事情 米山知子 148KB
ハンガリーにおける日本料理 ハンガリーの日本食事情 大塚奈美 108KB
ドイツにおける日本料理 高級料理からヘルシー料理へ 山田香織 176KB
アメリカにおける日本料理 サンフランシスコのアニメファンと日本食 小谷幸子 188KB
ペルーにおける日本料理 海を渡った日本食、定住先でのその姿 山本睦 184KB
「コラム」
ベトナムにおける日本イメージの消費 さむらい、りきし@ベトナム 佐藤まり子 76KB
日本かぼちゃのトンガ流通? 誰の口に入る?トンガ産カボチャの行方 森本利恵 32KB
南米日系人の食卓 日系人に人気のスイーツ「ユカ餅」 八木百合子 296KB
バックパッカーとカツ丼 雲南のカツ丼 岡晋 292KB
日本の郷土料理 駅弁の包み紙 木村裕樹 136KB
機内食 機内食の日本食 八巻惠子 296KB
座談会 留学生たちの食卓 陳/アグネシカ/ドゥック 44KB
 
■おわりに:南出和余・佐藤吉文・小谷幸子  28KB