今回の研究会では、ユビキタス住宅の開発にとりくんできた機関の関係者にお越しいただき、これまでの取り組みの概要とそこであきらかになった問題点や将来への展望について話をうかがいます。住宅という私たちの日常生活が営まれる場を舞台に、こうしたプロジェクトがすすめられていること自体、関係者以外にはあまり知られていないのではないでしょうか。そのいっぽうで、成果の一部は現実の住宅にも応用されはじめています。あらたな科学技術を住宅がとりこんでゆくのは当然のことですし、住宅をベースに技術開発がくり広げられるのも歓迎すべきことにちがいありません。しかし、いったい全体、私たちの住宅をどのようにするのかという肝心要の部分については、もうすこし開かれた議論が必要であるようにおもわれます。
ユモカ(ユビキタス社会の物と家庭にかんする)研究会がスタートして3年になります。おりしもユビキタス社会の到来が夢をもってかたられ、住宅のなかにユビキタス環境を実現しようとする試みがさまざまな機関ではじめられていました。2010年にユビキタス社会の実現をめざす<u-Japan政策>が総務省から発表されたのもその頃です。ユビキタスで日常生活はどれほど快適に便利になるかをそれらの計画はいちように謳っていました。それに対して感じたいくばくかの違和感がこの研究会設立の発端になっています。
いつでもどこでも情報にアクセスできるユビキタス社会は人間の知識や情報のありかたそのものに変革をもたらすはずです。それは人間同士の関係を変え、私たちの生き甲斐や人生観に影響をあたえてゆくにちがいありません。そのとき、住宅にしろ、それをささえる家族や社会にしろ、あるいは生活様式にしろ、いまのまま変わらずにいるとは考え難いのです。
住宅は利便性や快適さに還元できない側面をもちますが、予想される人間や社会の変化にどうこたえてゆくか、ユビキタス住宅の真価は、そのような課題に対するヴィジョンをどこまでもちえているかにかかっているような気がします。
今回、ゲストコメンテーターにお招きした美崎薫さんと南雄三さんのおふたりは、将来の住宅に対するそれぞれのヴィジョンを、自宅を実験住宅と化すことで、自身の生活の延長として、きわめて実践的にしめされています。研究会では、ユビキタス住宅について、すこしでも住み手や造り手の顔のみえる議論ができるよう期待しています。