国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2013年07月10日

「武器からアート」を制作するモザンビークの芸術家

 企画展「武器をアートに―モザンビークにおける平和構築」7月11日~11月5日)のオープンとその開催の意義を問う国際ワークショップにモザンビークから芸術家らが訪れた。これは、本館の吉田憲司教授の長年のフィールドワークによって実現したものである。作品の制作者、フィエル・ドス・サントス(Fiel dos Santos)さんとクリストヴァオ・カニャヴァート“ケスター”(Cristovao Canhavato “Kester”)さん、ならびに「銃を鍬に」プロジェクトのコーディネーターのニコラウ・ルイス(Nicolau Luis)さんが招聘された。モザンビークは、1975年の独立から17年にわたる内戦の終結後、荒れ果てた大地、すさんだ人びとの心、そして数百万丁の銃が民間に残されたという。その混乱から平和を導く「銃を鍬に」プロジェクトがモザンビーク聖公会のディニス・セングラーネ司教らによって1995年から始められた。武器を農具、ミシンや自転車と交換して武装解除を進め、回収した武器でアートを制作する運動である。これは世界でも、人類史上にも類例のない民間人の手による武装解除と平和構築の運動である。
 この運動には、松山のNPO法人「えひめグローバルネットワーク」(代表:竹内よし子さん)が15年前から深く関与し、自転車をモザンビークに送ってきた。民博では、上記の芸術家に「いのちの輪だち」(自転車)ら10点余の作品の制作を依頼し、吉田さんが制作に立ち合い、その完成品を企画展で展示している。その自転車の制作には380丁の銃が使われ、銃を地雷がある森から掘り出すという命がけの作業が伴ったという。この運動は、カンボジアや南スーダンにも影響を与え、武器から平和のモニュメントがつくられている。モザンビークは、「武器輸入・紛争国」から「平和の輸出国」(竹内よし子さんの言葉)へ変身して、「奇跡の発展」を遂げている。モザンビークの民間人や芸術家たちによる「武器をアートに」の運動が、世界の紛争地帯にも及ぶことを願う次第である。


2013年07月10日 15:21 | 全体 海外からの来客