国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2013年07月14日

コーネル大学の教員による国際フォーラム

 コーネル大学人類学部教授兼東アジア研究所長の宮崎広和さんと同大学法学部・人類学部教授のアナリース・ライルズ(Annelise Riles)さんをお招きして本館の丹羽典生准教授との共同企画で「金融のなかの贈与―金融と人類学の交差点」を7月14日に開催した。宮崎さんは本館外国人研究員として7月から2か月間の滞在である。宮崎さんは、フィジー社会の調査研究を行い『希望という方法』(2009年、初版は英語でスタンフォード大学出版、2004年)のほか多くの論文を発表している。一方、ここ10年は、金融人類学の研究を進め日本の金融業界のフィールドワークを行い、Arbitraging Japan: Dreams of Capitalism at the End of Finance(Univ. of California Press, 2013)を刊行している。
 フォーラムの目的は、日本の金融を対象に「贈与交換論」の視点から、人類学・歴史学・金融学・経済学が異なる学問分野でフィールドワークを行って連携を深め、包括的な経済人類学を構築することにある。東京大学教授の桜井英治さんは中世日本の手形・割符と贈与慣行との関連性、アナリースさんと宮崎さんはアベノミクスの「期待・希望・信仰」的性格とメラネシアの交換論との比較、そして外資系証券会社員の神山直樹さんは株式を「償還金が約束されず、金利もなく、配当金も不明、返礼を要求しない株主」などの性格から贈与であると提起した。これらの報告に法政大学教授の山本真鳥さん、一橋大学研究員の深田淳太郎さん、東京大学教授で日本経済史・経営史が専門の中村尚史さんがコメントを加えた。中村さんは、株式制度を導入した明治時代、株は「顔の見える、縁故や奉加帳」的なものと考えていたが、高配当を期待するにつれて匿名的な株式投資へと変化したことを指摘した。
 これらの議論から、金融における期待や希望や夢とリスクや不可知性などを帯びた投資行為は、贈与交換の基本的な態度と共通することが明らかになり、金融人類学への関心を強めることができた。

2013年07月14日 13:20 | 全体 海外からの来客