国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2013年06月30日

台湾の博物館訪問(1)―国立台湾歴史博物館

 ナショナリズムの高まりのなかで新設された国立台湾歴史博物館を含め4つの博物館の見学と講演のために6月26日から30日まで本館の野林厚志教授と台湾を訪れた。
 26日午後、桃園飛行場から台南に直行し、2011年10月に開館した国立台湾歴史博物館を訪れた。この博物館設立のねらいは、歴史の多重性と民族集団の多元性の相互作用のもとに生み出された台湾の人と社会と文化のダイナミズムを展示によって示すことにある。呂理政館長は本館に何回も足を運び、また世界の博物館を見て回り、博物館構想を練りあげてこの博物館を実現させた。キーコンセプトは、「過去をとおして今を知り、未来に思いをはせる」ことにある。 
 国立台湾歴史博物館は、正面に太陽光パネルをそなえ、4階建て総ガラス張りの超近代的な建物である。台南の郊外に位置し、多くの池や丘に囲まれた20ヘクタールの公園の中にある。1階が子供館や劇場、2階が常設展示場、3階が文献図書、映像、データベース等の資料室、事務室、研究室、4階が特別展示場。中央が吹き抜け構造で4階から各階を見渡せる。2階の常設展示場は、4,300㎢で本館の常設展示場の半分程度の広さ。台湾の旧石器時代から現代までを一本の道で旅できる導線になっている。初期の住人、西欧・日本・中国との出会い、広東・福建人の進出、日本統治、共産主義と資本主義のせめぎ合い、多様性とこれからの台湾をテーマに展示されている。各時代、家屋、乗り物、人物などを復元し、その場にたたずむと自分がその時代のなかにいるかのような臨場感を味わえる。

 日本統治時代の展示は、盤石な支配体制の象徴として駐在所を建てている。欅材の立派な建物である。また、雑貨店、着物店、写真館、カフェなどを復元して活気ある都市風景を再現している。警官の像を建て、警官と台湾人が並び立つなど威圧的・搾取的支配の雰囲気は見られず、台湾の人びとの自由な雰囲気が伝わってくる。また、二宮尊徳像によって、近代的な日本教育の導入をあらわしている。呂館長は、日本統治への批判は各人がおこなえばよく、日本時代を近代台湾の始まりと位置づけ、「未来へつなげる過去」をテーマに展示していると述べている。

 開館1年が無料のこともあり、入館者は180万人を数えたという。マーケットの人出のような状況では、展示を見ることができず、呂館長の望ましい入館者数は年間40万~60万人とのことである(民博の入館者は21万人)。台南市の教育委員会の方針で小中高生の見学が推奨され、当日もバスで多くの中・高校生が訪れていた。野林さんは、台湾の人びとは好奇心が強く、また新しいことを見逃さない性格から、大量入館者現象が起きたと分析している。 

2013年06月30日 16:20 | 国際学術協定ほか