国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2013年06月30日

台湾の博物館訪問(3)―被災地小林村訪問

 6月27日は、2009年8月9日朝に台風豪雨による土砂災害で埋まった高雄県甲仙郷小林村へ、歴史博物館のスタッフの案内で向かった。マンゴーの畑が連なる山あいの道を1時間半、被災者が住む復興住宅地についた。そこには「小林平埔族群文物館」が、災害復興事業の一環として建てられている。小林村の生活と文化を後世に伝える資料館で、民具類数百点が展示されている。当日、山の家にいて災害を免れた長老の方が民具類を美しい日本語で説明してくれた。平埔(シラヤ)族の言語学と民話の調査を小林村で行った台北帝大の浅井恵倫(1994~1967年)の業績につてもパネルで紹介されていた。

 小林平埔族群文物館での長老の説明

 

 文物館から2キロ上流の被災現場は、土砂が盛り上がり旧村落の姿は消滅していた。169戸の家と500人が犠牲になり、ほとんどの方が依然として不明である。被災現場を見下ろす小高い丘には、墓標、被災没者の氏名を刻んだ石碑と祭祀場が建てられている。先ほどの長老は4人兄弟で、長兄は日本時代に戦死、兄と弟とその家族の多くが犠牲になったという。彼の他家に嫁いだ娘は助かったが、妻をはじめ息子夫婦もなくなった。長老は、石碑に刻まれた兄弟の名前に触れながら、自分が助けられなかったことを悔やんでいた。

        被災現場             小林村記念公園

 

 被災後、政府の対応は遅れたが、某宗教団体がいち早く救済にあたった。そのために、現在、政府系と宗教団体系と復興村は2か所に分離している。被災地に近い上流の場所には、旧村の近くに住むことを希望した年配者が、勤めに便利な町に近い下流の復興村には若い世代が住んでいる。下流の復興村では、仮設住宅跡を利用して、政府や企業の支援をうけ、パン工場やハーブ石鹸の工場、さらに郷土工芸制作所などを設けて、経済的な自立へ向けての事業を初めており、その発展を願うところである。


        復興住宅               パン工房

2013年06月30日 16:10 | 国際学術協定ほか