国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2013年06月30日

台湾の博物館訪問(4)―国立台湾博物館と講演

 628日は午前10時から、本館との学術協定校、台北国立芸術大学の黄貞燕教授の要請で講演会「オセアニアの伝統政治と公共圏」を行った。会場は国立台湾博物館で陳濟民館長が進行役をつとめ、大学・博物館の研究者や大学院生など80名ほどが集まった。旧友の王高山国立台北芸術大学教授や神戸大学時代の教え子も来てくれた。私はオセアニアには、国際的なNGONPO、教会などによる集団、民主化を求めるグループ、国家に抗う地域集団などが形成されており、住民と国家の間に中間集団的な集まりとしての公共圏が存在することを報告した。私の報告に対し、台湾中央研究院民族学研究所(Academia Sinica)の郭佩宜研究員は、ヨーロッパ製の公共圏概念をオセアニア社会に適用することの意義についてコメントをするなど、2時間にわたって議論が盛りあがった。野林さんのお話によると、台湾原住民がオセアニア島嶼部の人々の祖先で、ともにオーストロネシアン(南島語族)と呼ばれることから、台湾の人々はオセアニアに親近感を持っているとのことである。

 628日午後は、国立台湾博物館の洪世芳副館長と李子寧研究組長の案内により、館内をゆっくりと見学することができた。島の成り立ちや動植物から、諸民族の生活・生産用具や儀礼具などが展示されている。特に日本統治時代に日本の研究者によって収集された民族衣装や民具などが生き生きと展示されているのには驚いた。国立台湾博物館は2008年に創設100年をむかえた。1908年に「台湾総督府民生部殖産局付属博物館」として発足し、1915年に現在の博物館が建設された。今でも正面にギリシャ・ドリス式の列柱が並ぶ、美しいクラッシック風の建築である。
 この博物館の民族資料と植物標本の収集および写真資料には、台湾で30年間にわたってくまなく「蕃地調査研究」を行い、「台湾蕃社総頭目」と呼ばれた森丑之助(1877~1926年)が絶大なる貢献をしている。博物館4階には、第4代総督児玉源太郎と民政長官後藤新平の銅像が置かれている。1915年に博物館は、現在の地・台北新公園に「児玉総督及び後藤民政長官記念館」として開館された。その記念にこの2体の立像が1階ロビーにおかれた。戦後民国政府はこの像を撤収したが、2008年の100年記念を機に展示されることになった。児玉と後藤が「台湾のための統治」を行ったことが現在、再評価されているようである。

2013年06月30日 16:05 | 国際学術協定ほか