国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2013年02月06日

フランスとオランダの博物館などの見学(1)―ケイ・ブランリ博物館(Musée du quai Branly)

 2013127日から26日までパリのケイ・ブランリ博物館やライデンの国立民族学博物館などを訪れて、現代の博物館の展示や活動について館長らと話し合った。 
 1月28日には、ケイ・ブランリ博物館を本館准教授の三島禎子さんと訪れた。窓ガラスの外側に植物の下がる館長室でステファン・マルタン(Stéphane Martin)館長と話し合った。この博物館は、人類博物館、国立アフリカ・アジア美術館など3館の収蔵品30万点を集積して建設され、2006年8月にオープンした。エッフェル塔に近く、「ブランリー河岸」に建つ赤い舟形の建物である。常設展はパプアニューギニアの彫像と仮面が入り口に置かれたオセアニアからアジア、アフリカ、南北アメリカへと曲線で連なるコーナーに3000点の資料が展示されている。そのうち500点を毎年入れ替えている。

 入り口から薄暗い川を蛇行する蛇の姿がスポットライトで描き出されるスロープを歩きながら、円形6層の収蔵庫におさめられた膨大な楽器展示を右手に見て常設展示場へと向かう。常設展示は「美しい」と感じられる標本資料が展示され、特展は民族誌的資料を重視した展示となっている。ケイ・ブランリの展示は、学術的な研究対象ではなく美術鑑賞的な「アート」表現に偏重しているという批判もある。マルタン館長は「美的な展示」を意図したわけではなく、「入館者に非ヨーロッパ人の芸術的表現を学び、理解するための示唆を与えることを重視し」ために、「豊穣性、精霊と親しみ、祖先をたたえる」機能と特徴をもつ標本資料が中心になったと述べている。つまり、美術館とか博物館とか言われないような展示を心がけたとのことである。
 オセアニア展示で目についたのは、バヌアツの6本のスリットゴングの立像、タヒチの長さ2.5m幅1.8mメートルの樹皮布、ニューカレドニアのひすい製儀礼用斧など、旧フランス植民地で19世紀につくられた収集品である。オーストラリアのアボリジニの砂絵、樹皮画やシルクスクリーンなど精巧で濃密に描かれた作品も展示されている。アフリカの象牙海岸やカメルーンの母子像やマリの女性像、アメリカホピ族のカチーナ人形、メキシコの神像やインカの男性像など、「美しい」イメージが展示されている。

 また、特別展は、古代のミイラから今のモデルの髪形まで、世界の民族の多様な髪形や装飾を扱った「人間の毛展」(20129月~20137月)のほか、2カ月単位開催の「ミクロネシアを旅した画家展」(明治から昭和にかけ日本に住んだフランス人画家・ポ-ル若礼が描いた浮世絵、絵画と版画)、「フィリピン展」や「芸術の革新展」などが順次開催される。毛髪展を企画した遺産収集部長のイヴィス・レ・フール(Yves Le Fur)さんは、この準備には3週間をかけただけであると説明していた。複数特展の同時開催は、それぞれキュレイター(研究員)一人の責任で行うとのことである。
 展示場では研究員が10数名の小中学生に展示の解説をし、子どもたちが展示物の絵を描いている風景があちこちで見られた。博物館教育を重視しており、1階にはメディアテークと呼ばれる学習室を設けている。学生たちが集団で熟覧し、モノ情報をパソコンから取り出せるスペースが4室設置されている。収蔵庫は地域・国別に整理して収納し、展示の優先順位をつけている。また、多目的すり鉢型劇場を備えており、それをかこむ巨大カーテンが三宅一生作であることをフールさんは自慢げに紹介してくれた。ケイ・ブランリの専任研究員は20名で、教育省と文化省からの財政支援を受け25%は自主財源で運営し、入館者は年間100万人とのこと。

2013年02月06日 14:44 | 全体 国際学術協定ほか