国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2013年02月06日

フランスとオランダの博物館などの見学(3)―オランダのトロッペン博物館(Tropenmuseum:Museum of the Tropics)

 21日にアムステルダムの王立熱帯研究所(Royal Tropical Institute)附属トロッペン博物館を訪れた。この博物館は、オランダ領植民地であった熱帯地域での収集品を中心に展示している。この博物館は1864年にハールレムに設立された「植民地博物館」を祖とし、1926年にアムステルダムに設置された王立植民地研究所の管理のもとに新たに開館した。1979年の改修では、世界に先駆けて子供博物館(Tropenmuseum Junior)を設置した。2009年に民族誌的資料、現代アート、無形文化遺産と大衆芸術などをバランスよく展示するリニューアルを行った。現在、約18万点の資料と27万点の古写真と映像資料を所蔵し、年間18万人の観覧者が利用している。 
 

    20世紀初めの植民地研究所    ハールレムの植民地博物館の展示

(D. van Duuren, Oceania at the Tropenmuseum, 2011. より) 

  
 旧植民地以外の地域でも組織的体系的な収集を行い、東南アジア、オセアニア、南アジア、西アジア・北アフリカ、サハラ以南アフリカ、ラテンアメリカ、カリブなどの民族誌的展示と文化変化を示す通文化的展示している。オセアニアでは、ニューギニアの精巧につくられたビスポール(祖先像)が保存状態の良い形で展示されているのには驚いた。アフリカ展示は、ビーズ細工の展示が異彩を放っている。また、インド展示は、現代の多様な民族の特徴を紹介しており、また一階の通文化展示では、伝統的なモノ(仮面)と西欧風の姿(欧風髪形の女性の写真)の類似性・対称性を表現する、独創的で興味深い展示を行っていた。アフリカの研究員ファイバー(Paul Faber)さんは、アフリカ展示は現在のアフリカをも視野に入れて展示したし、通文化展示が文化変容をモノや写真で表現していると語っていた。 
 

ビスポールの展示

 (D. van Duuren, Oceania at the Tropenmuseum, 2011. より)  
  

アフリカの現代展示

 (P. Faber, Africa at the Tropenmuseum, 2011. より) 

 


 子供館は、「MixMax Brazil」のテーマで、ブラジルの風景を形づくり、家族でブラジル旅行に出かける仕掛けとコースが用意されていた。案内役は、ブラジルからの留学生がボランティアで協力している。年間3万人の小学生などに利用されている。
 トロッペン博物館は、オランダの植民地経営における現地社会・文化理解の促進による経済開発政策の一環として生まれた歴史ある博物館ではある。1970年代からは外務省が主財政支援母体となったが、財政逼迫から2012年度は予算の20%され、運営が難しくなったとヴェルダースドンク(Peter J.W. Verdaasdonk)館長は苦しい経営状況を語ってくれた。しかし、2015年には日本の漫画展開催の計画を立てている。トロッペン博物館は、将来的にはライデンの国立民族博物館と統合する話が持ち上がっているという。
 
 (5月にライデン国立民族学博物館のF.N.ヴェイズ研究員から、トロッペン博物館の閉鎖に反対する署名依頼があったが、6月には次のような朗報がメールで届いた。
 
オランダ議会においてトロッペン博物館は今後3年間、5.5百万ドルの予算措置が認められ、その間の存続が可能になった。しかし、2007年には、オランダのすべての博物館が評価されるが、トロッペン博物館も同様な扱いを受けるという。そして、トロッペン博物館は、①ライデン国立民族学博物館に併合する、②所蔵する標本資料と文献図書を国家所蔵品とする、③王立熱帯研究所から独立する、という条件のもとでの存続となる。
 
 私の訪問時にライデン国立民族学博物館のスタッフは、統合に際してトロッペン博物館の所蔵品が「個人所蔵品」の寄付が多く権利関係を明確にすること、そして王立熱帯研究所との関係を解消することが必要であると述べていた。上記の②③を見る限り、その問題は解決できるようである。オランダの二つの伝統ある「民族学」博物館が併合・統合されることによって、将来の独創的で個性のある博物館活動の展開が期待される。)
2013年02月06日 14:30 | 国際学術協定ほか 全体