国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2014年03月20日

ミシガンから王さんご家族の訪問

 3月20日に生まれ変わった本館の中国地域の文化展示場の「華僑・華人」のコーナーに鮮やかな剪紙(切絵)が飾られている。これは、アメリカのミシガン在住の王瑞豊・林珠江ご夫妻さんから寄贈された美しい「望郷亭」の切絵で、王さんご夫妻が2005年に北京の百望山森林公園に寄贈した東屋(亭)の望郷亭をモチーフにしている。この繊細で美しい切絵は、中国の著名な民間芸術家、鄭蝴蝶さんの作である。この望郷亭の切絵は、王さんが旧友である神戸華僑の陳耀林さんから本館の中国展示場に華僑・華人コーナーが設置されることを耳にして、2012年にミシガンから来日して寄贈してくださったものである。

(陳天璽さん提供:2014年3月20日)

 

 王さんご夫妻のご両親が日本統治時代に台湾から来日して定住したので、王さんご夫妻は日本に生まれて大学を卒業するまで暮らした。そして、文化大革命の直前北京にわたり、中国国際放送日本語部や北京農業大学また後には中国科学院遺伝研究所に勤務した後、1979年にアメリカへ移住した。2002年に北京を再訪した際に、かつての日中戦争の最前線であった百望山に望郷亭を寄贈することを決めたとのことである。王さんから望郷亭の切絵の寄贈を受けるきっかけは、本館の准教授陳天璽(現早稲田大学)さんが友人の陳耀林さんに華僑・華人のコーナーを作る話をしたことによる。陳天璽さんの話では、王さんが本館へ切絵を寄贈した理由を次のように述べたという。「人は誰でも故郷をもち、そこに思いを馳せている。どこの国籍か、どこの国民かに関係なく、私は人類の平和を願って建てた。その剪紙を民博で展示してもらえるのは望外の喜びだ」と。
 3月20日の展示場の新構築オープンには、王さんご夫妻と二人の娘さん夫妻、お孫さんのジャクリーンちゃんとアレキサンダーくんら総勢8名のご家族がミシガンからはるばる参加してくださった。神戸在住の陳さんご夫妻、王さんの大阪大手前高校の同期生の皆さまも式典に参列してくださった。王さんがご寄贈くださった望郷亭の切絵は、華人の故郷とのつながりを象徴するとともに、華人と母国との虹の架け橋として大きな意味をもつ。
 王さんは、中国の切絵を日本に寄贈するにあたっては、「政治的に利用されるのではないか」と心配したという。しかし、本館が国立の博物館で世界各地のモノを展示してあることから、切絵は「中立な立場」にあることを確認できたと喜んでおられた。王さんご自身が日本と中国とアメリカという3つの「故郷」で活躍された偉業と王さんの切絵に込められた「人類の平和を願う」お気持ちが私たちの心に伝わってくる。王さんの高邁な理念にもとづくご厚意に深く感謝する次第である。

2014年03月20日 14:03 | 全体 海外からの来客