国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2014年03月30日

台湾の原住民芸術家の訪問

 台湾では現在、オーストロネシア系の原住民族の芸術家たちが失われた文化を復興させる「重建」運動を展開し、祖先の生みだした造形を継承して自らの手で新たな「伝統工芸」を創造する「重製」活動を行っている。台湾で高名な3名の芸術家が、本館教授野林厚志さんが企画した公開シンポジウム「伝統と創意―台湾における原住民族工芸」に参加するために3月30日に来館した。タイヤル族のユマ・タルー(尤瑪達陸)さん、ブナイ・ワタン(弗耐瓦旦)さんとパイワン族のチェンリー・ヨウメイ(陳利友妹)さん、プユマ族のリン・ツーシン(林志興)さんである。チェンリーさんは、野林さんの調査地の「母」であり、また本館名誉教授の松澤員子さんが50年前にパイワン調査に赴いたときに彼女の家に投宿している。ブナイ・ワタンさんとユマ・タルーさんご夫妻は、2年前に民博の収蔵庫で日本統治時代のタイヤル族の衣服やバッグなどを2週間にわたって熟覧した。また、リンさんも2000年に外国人研究者として本館に滞在し、それ以降2度本館を訪れている。
 本シンポジウムは、芸術家の語りと実演を行う新しい試みであった。女性作家のユマ・タルーさんは、足で経糸をのばす腰機で織物をつくりあげているが,織機と身体が一体化しないと織ることができないと述べている。チェンリーさんは、9種類の刺繍の型を披露した。彼女は台湾で最初の民族工芸の文化功労者で、刺繍の伝統技術をバッグ、財布、壁掛け、テーブルクロスなどに表現している。チェンリーさんは、初めての来日で、民博へ来るのが待ち遠しくて「1週間は眠れなかった」と話していた。日本で野林さんと松澤さんにあえて心から喜ばれていた。

    腰機で織るユマ・タルーさん    刺繍中のチェンリー・ヨウメイさん

 

 ユマ・タルーさんとチェンリーさんはいずれも、母親から伝統技術を見習ったが、自らでデザインや技法に工夫を加え、新しい「ほんもの」の伝統工芸を生み出している。リンさんは、台湾原住民族の現在の状況と問題点や伝統工芸の存続について話してくれた。
 
 なお、このシンポジウムには、台北駐日経済文化代表処台北文化センター長の朱文清さんが東京から駆け付け、来賓あいさつで民博の台湾研究について話してくださった。そして、台湾芸術家とじっくり話され、実演を伴うシンポジウムの構成に感心されるとともに、日本での公演を喜んでいた。

2014年03月30日 14:35 | 全体 海外からの来客