国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2015年10月22日

中国浙江大学図書館に「民博文庫」を創設

 浙江大学は、図書館に国立民族学博物館の「民博文庫」を創設し、その除幕式を10月22日に挙行した。式には、羅衛東副学長、田稷図書館副館長、沈文华公共管理学院副院長、孫暁菲資源建設部長、樓可程芸術と考古学博物館副館長、曹綿炎文化遺産研究院常務副院長、人類学研究副所長阮雲星教授ら30名が参加し、民博からは私が招待された。
 民博文庫は、2009年の羅副学長の民博訪問、2011年の阮教授の外国人研究者として1年間の民博滞在、2013年の浙江大学主催の国際シンポジウムでの私の講演などの学術交流の結果として誕生したものである。浙江大学は2005年に人類学研究所を設立して文化人類学の研究を積極的に推進すると同時に、学部・大学院に人類学のコースを設けて教育を行っている。この人類学の教育と研究のために文化人類学関連の書籍の収集に民博は協力を要請された。
 それを受けて、館長室では、民博の『国立民族学博物館研究報告』、同『別冊』、『国立民族学博物館調査報告』、Senri Ethnological Studiesなどの学術雑誌の創刊号からのセット、民博が組織している共同研究の成果刊行本、および館員が刊行した単行本などを寄贈することにした。2013年から順次浙江大学人類学研究所に書籍類と映像DVD等を送付してきたが、600点を超えた10月の段階で開設式ということになった。
 民博文庫は、浙江大学図書館3階の外国文献コレクションコーナーに設置され、書籍類はガラス扉つきの重厚な本箱に収められている。今後も本館の定期刊行物、本館刊行の書籍や人類学関連図書を定期的に寄贈する予定である。これを機に、羅副学長は浙江大学と本館との学術協定の締結を希望されており、本館としても映像人類学などの研究者が双方で活躍していることなどから検討することにしている。

 中国の大学で中国外の諸民族の社会や文化について研究調査する文化人類学の研究所と大学院の専攻を備えているところは、北京大学、中国人民大学、中央民族大学、中山大学などそれほど多くはない。現在、浙江大学の文化人類学の博士課程には10名余の学生が在籍し、それぞれのテーマに基づいて学位取得を目指して研究に励んでいる。
 また、浙江大学は付属「芸術と考古学博物館」を建設中である。この博物館は、民博と同規模の建物で、国家方針として学生の教育に活用する目的で建設することになったという。中国の歴史的美術・工芸品や現在発掘を進めている敦煌遺跡の出土品などを展示する予定。日本の文化に関する資料は皆無で今後収集にあたるという。樓副館長とは、2時間にわたり民博の民族資料の収集、管理、保存展示の方法、博物館のスタッフの研究と博物館運営・管理、日本文化関連の収集対象物などについて議論した。
 民博文庫の開設を記念して、10月22日夜に、私は図書館主催の「東方論壇」第178回講演会において、「人類の文化資源に関するフォーラム型情報ミュージアムの構築」というタイトルの講演を行った。民博が進めているインターネットのオンライン上に誰もがどこからでもアクセスできる民族学の情報博物館をつくる話で、聴講者は関心を強めたようで、現地の人びとや博物館との関係は、アクセスする人の制限はなど多くの質問受けた。
 
 浙江大学は、新しい学問の展開と開拓、博物館などの施設の拡充等を積極的にすすめており、大学の研究と教育の発展に向けて教員や指導者の熱意のもとで前進していることを強く感じて帰国した。そして、浙江大学の学生と大学院生が民博文庫を大いに活用して世界の諸民族の文化や価値観の多様性に関心をもち、知識を深めて文化人類学の研究の道に進むことを期待している。

2015年10月22日 11:29 | 全体 新着記事