国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2015年10月16日

国立台湾歴史博物館と学術協定の調印(3)―研究集会

 16日の調印式後、研究集会がスタートし、最初の「博物館の価値と社会的責任」のセッションでは、呂館長が「友善平権的博物館」、須藤が「21世紀の博物館と博情館―文化資源研究の新展開」をそれぞれ基調講演として話した。呂館長は、障がい者やマイノリティの人びとが心安く、自由に博物館を見学できる人権擁護のユニバーサルミュージアムの構築の重要性を強調した。須藤は、現在、民博がすすめている研究成果の積極的な教育・社会還元と民博所蔵の文化資源へのアクセスをオンライン上で誰でもどこからでも可能にする「フォーラム型情報ミュージアムの構築」について話した。
 16日午後は、「民族学博物館の新課題」のセッションで、野林さんが「台湾のエスニシティと動物観」、伊藤敦規さんが「民族学博物館とソースコミュニティの再会」をテーマに報告した。
 野林さんは、台湾原住民のパイワン、ツォウ、タオの各民族の調査に基づいてイノシシやブタの犬歯と牙の装身具が社会経済的特権のシンボルになっていることを述べた。さらに、豚の価値について、台湾各地の客家村落の義民節(不特定の戦没者や戦乱から客家を守った祖先などを祀る行事)において豚が奉納される慣行に触れ、とりわけ豚の肥育競争が激化し、新竹県の一昨年の例では1756斤(約1トン)の豚が捧げられたことを報告し、参加者一同を驚愕させた。
 伊藤さんは自らがとりくんでいるフォーラム型情報ミュージアム構築のプロジェクトにおける現地の人々と社会とのかかわり、とくにアメリカ南西部の先住民ホピやズニの人びとと民博や米国の博物館での熟覧によるデータベース作成の実際を語った。そして、マイノリティであるソースコミュニティ(民族資料を製作し使用している人びとの社会)で民族資料を作製した人々に説明や声を聞くことは、彼/彼女らの人権を擁護することに通じるのではとの感想を述べ、呂館長の人権擁護の博物館構想に応えた。

2015年10月16日 13:00 | 全体 新着記事