国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2015年10月17日

国立台湾歴史博物館と学術協定の調印(5)―ワークショップ

 17日午前は、昨夜見たシラヤ族と台湾平埔族についての討論を行う。
まず、呂館長が平埔族に関する歴史文献資料やドイツ人宣教師の描いた絵画資料について紹介があり、2013年に平埔族の特別展「看視平埔―臺灣平埔族群歴史與文化」を開催した理由など、シラヤ族の歴史軌跡を話した(平埔族展は、民博でも国際連携展示「平埔を見つめる―台湾平埔族の歴史と文化」を2013年9月から11月に開催)。シラヤ・平埔族の人びとは、台湾政府の民族認知を目指して運動しているが、原住民族として認定するための歴史資料や言語・文化的証拠がないのが現状である。したがって、現在、15民族が原住民族として認知されているが「平埔族とは誰か」という問いがこれからも続くことになるという。
 野林さんは台湾の歴史研究が盛んになったのは、戒厳令解除後の1990年代のことで、今後歴史資料や物質文化資料の発掘をはじめ、中国や欧米日の歴史文書などの検証によって台湾の歴史を総合的に明らかにすることが課題であり、台湾歴博と民博の連携研究の必要性を主張した。
 17日午後は、「博物館資源と科学的応用の趨勢」のセッションが組まれ、寺村裕史さんと台湾歴博の副研究員謝仕淵さんの司会のもと、台湾歴博の3名の研究員が報告した。寺村さんは「GISを用いた時空間情報の統合の方法論とその意義」のテーマのもとで、自ら調査したインダス文明の考古遺跡を例に時間軸と空間分布のレベルとの分析によって、文明の形成~衰退期と遺跡の分布域の相関関係を明らかにし、GISによる研究の有効性を実証した。その後、台湾歴博の研究員が「クラウド技術と資料運用」について、音響資料を常設展示する計画とその展示をネットで一般の人が家庭でも利用可能なシステムの開発の必要性について報告した。さらに、音響資料に関しては、日本統治時代に小川尚義や浅井恵倫理の収集した音響資料を所蔵している東京外国語大学と中国、台湾の音盤資料を所蔵する民博などと共同研究を行い、日本時代の音楽状況を理解し、その成果を「多元感参観体験」が可能な展示システムの開発へつなげたいと述べていた。
 「これからの台湾歴博と民博の連携」についてのセッションでは、野林さんからの「内田先生資料の日本学者的収集活動の意義」の報告に基づいて、その資料に関する共同研究や展示などの可能性について話し合った。内田資料は、日本時代・台南第一中学で地理教官をしていた内田勣(いさお)さんが撮影した貴重な写真類である。また、台湾歴博のスタッフからは、現在博物館で進めている資料の情報公開に向けての取り組みについて報告があった。17日のセッションには本館准教授の日高真吾さんも加わり、民博の資料の利用と保存などについて説明を行った。
 
 今後、民博と台湾歴博は、日本統治時代の資料の発掘、写真資料や音響資料などに関する共同研究、そして連携展示などの実現に向けて協力していく予定である。また、両館の所蔵資料の公開に関してのデータベース作成や発信に向けて、民博が進めているフォーラム型情報ミュージアムのプラットホーム構築とその活用などについても、双方で連携研究を実施する必要性が確認された。

2015年10月17日 13:00 | 全体 新着記事