国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2016年02月10日

アメリカの博物館長と研究者たちの訪問

 アメリカのズニ博物館長ジム・イノーテ(Jim Enote)さんら、北米先住民研究者7名が2月10日に館長室を訪れた。この訪問は、本館准教授の伊藤敦規さん主催の国際ワークショップ「フォーラム型情報ミュージアムのシステム構築に向けて」に参加するためである。民博は現在約50万点の有形・無形の民族資料などとそれに関する情報を収集保存している。この膨大な資料を「人類の文化資源」として同時代の人びとと共有し、かつ後世に伝えるための大型プロジェクト「人類の文化資源に関するフォーラム型情報ミュージアムの構築」を2014年度から文部科学省の特別経費を得て8年計画ですすめている。
このプロジェクトは、まず国内外の研究機関や大学、博物館および資料を制作・使用してきたソースコミュニティ(現地社会)と連携しながら、民博と連携機関が収蔵する多様な文化資源について国際共同研究を行い、その成果を記録化し、次にその記録をデジタル化と多言語化した上で発信することによって、さまざまな人びととオンラインで情報や意見を交わす環境を整備することを目的としている。
北米では民族学博物館が所蔵する民族誌資料やアーカイブスを現地社会とともに熟覧し、その過程で得られた情報や知識をデジタル化してオンライン発信するデータベースが構築、運用されている。例えば、スミソニアン協会国立自然史博物館極北研究センター・アラスカセンターが運用する「Sharing Knowledge」、ブリティッシュコロンビア大学の人類学博物館が運用している「Reciprocal Research Network」、ズニ博物館を中心とした「Amidolanne」などである。
民博がすすめているフォーラム型情報ミュージアムプロジェクトにおいては、ここに挙げたいくつかのプロジェクトを参考としながら、協働性、情報生成性、オンライン環境におけるセキュリティやインターフェースといったデータベースシステムのキーとなる内容について検討している。また、民博が目指している、世界の諸民族の民族資料の多言語による情報発信と非言語による情報検索、そして協働環境づくりの次のステップである教育プログラムの開発などの点は、世界でもあまり実施事例がなく、多くの可能性を秘めている。
 こうしたフォーラム型情報ミュージアムの構築と運用の課題と可能性を検討するために、ソースコミュニティと民族学博物館との協働の分野において、研究経験があり方法論の上でも中心的な役割を担ってきた専門家を北米と欧州から招聘した。イノーテ館長のほか、極北研究センターのアーロン・クロウエル(Aron Crowell)さん、ブリティッシュコロンビア大学人類学博物館のスーザン・ロウリー(Susan Rowley)さんとニコラス・ヤコブセン(Nicholas Jakobsen)さん、国立アメリカンインディアン博物館のシンシア・チャヴェス‐ラマール(Cynthia Chavez-Lamar)さん、アムステル大学のロビン・ボースト(Robin Boast)さん、ワシントン大学バーク自然史・文化博物館のキャシイ・ドルテイ(Kathy Dougherty)さんそして北アリゾナ博物館のケリー・ヘイズ-グリピン(Kelly Hays-Gilpin)さんの7名である。彼・彼女たちとは、アメリカでお会いしたり、一昨年10月の本館のワークショップお招きするなど、親密な関係を維持してきている。
 ワークショップは2月11日~12日の2日間にわたって行われ、民博側からは教授の岸上伸啓さん、准教授の丸川雄三さんと助教の寺村裕史さんも参加して、各々が携わってきた協働事業やシステム構築・運用に関する事例、情報の適正化と高度化、システム構築などについて報告と議論を重ねた。
このワークショップで報告された各博物館での取り組みの具体的な経験を踏まえ、民博のフォーラム型情報ミュージアムプロジェクトの全体的な方向性を文化人類学や情報学や博物館学などの研究に基づいて学際的かつ多角的に検討し、その実現につなげていくつもりである。

2016年02月10日 14:26 | 全体 新着記事