国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

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2016年04月20日

フランス・ブザンソン美術考古学博物館の学芸員の訪問

 民博は2月25日から5月10日まで特別展示『夷酋列像―蝦夷地イメージをめぐる人・物・世界』を開催している。この展示は、2015年9月に北海道博物館でオープンし、12月から国立歴史民俗博物館で、2月から本館で開催される巡回展示である。この展覧会にはブザンソン美術考古学博物館から11点の肖像画を借用期日4月19日の約束で借用しており、その引き取りに同博物館の学芸員、ボールディン・エステーレ(Bourdin Emeline Michele Estelle)さんが本館を訪れた。
 この展示は、ブザンソン美術考古学博物館で1984年に確認された松前藩の画家・蠣崎波響(かきざきはきょう)が描いた11名のアイヌの首長と1名の女性の肖像画を中心に、後の画家たちが描いた模写、粉本などの関連作品とその当時のアイヌの人々の生活や北海道の姿を示す資料類を展示している。この肖像画は、1789(寛政元)年に北海道東部で起きたアイヌと和人による「クナシリ・メシナの戦い」で和人側の立場に立ち松前藩のアイヌ鎮圧に協力したアイヌの首長の雄姿と1名の女性の姿である。首長たちは、中国から輸入した絹織物の蝦夷錦やロシアから手に入れた軍服などを身に着けており、当時のアイヌの人々がラッコなどの毛皮と中国・西欧から衣服や装飾品などを交易していたことがうかがえる。
 ボールディン・エステーレさんによると、この絵がいつ頃、だれによってブザンソン美術考古学博物館にもたらされたかについては、明治初期にフランスの宣教師による、フランスの軍人による、あるいは貿易商によるなどが考えられるが、ブザンソン側にもその足跡を示す正確な資料がないという。当博物館では、1933年に「夷酋列像」の存在を目録に登録し、84年にこれが蠣崎波響作であることが確認された。11点の肖像画にはカビやシミなどの汚れが見られることから、帰国後にフランスで修復などの作業を行う予定であるとのこと。肖像画を借用にブザンソンを訪問した北海道博物館研究員の右代啓視さんは、当博物館は緑に囲まれた環境にあり、多くの遺産を所蔵し、展示しており、観覧を進めてくれた。
 返却されたブザンソン美術考古学博物館の作品のあとには、本館収蔵の波響作品の模写で12名の首長たちについて松平定信が書いた解説文付き絵巻物の「夷酋列像図」上・下巻が展示されている。

2016年04月20日 14:04 | 全体 新着記事