国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2010年06月26日

ジェームズ・クリフォード教授の初来日と講演会

ポストモダン人類学の論客として著名なJ・クリフォード(James Clifford)教授が初来日/来館された。クリフォード教授は、人類学の批判的歴史家として1980年代から人類学の概念や方法論などについて根本的 な内省を促し、人類学の「再活性化」を牽引して来られた。このたびの訪日は財団法人国際文化会館の招きによるもので東京の国際文化会館と本館で公演を行っ た。コンタクトゾーンとしてのミュージアムの性格が強い本館においては「文化遺産の返還とその再生―アラスカ州コディアク島の仮面をめぐって」を テーマに、博物館の所蔵資料とその収集地域の人々や博物館等との資料共有化に向けての多様な可能性について持論を展開された。そのあとのパネルディスカッ ションにおいては、博物館学の第一人者吉田憲司さん(本館教授)の司会のもと、クリフォード教授を「師と仰ぐ」ほど昵懇な太田好信さん(九州大学教授)と イヌイットの国際的研究者岸上伸啓さん(本館教授)からのコメントを軸に、博物館の研究活動や収蔵品の互酬的な活用などについて議論を深めることができ た。本講演の論文は『国立民族学博物館研究報告』に掲載予定である。
クリフォード教授は、みんぱくについてはかなりご存じで、新構築のアフリカ展 示を見た後で、「展示物と映像画面に吸い込まれるようだ」と、評価していた。また、ニューカレドニアの先住民文化の活性化をもくろむチバウ博物館の欠点や 地方博物館とのネットワークを重視するヴァヌアツ文化センターの活動など、オセアニアの博物館についての情報を交換した。
マヤ語研究者の奥さまと念願の訪日を実現したクリフォード教授は、日本のランドスケープに強い関心を示し、南禅寺の庭園が時間とともに変化する光の美しさを詩的に表現されていた。また、瀬戸内海の島に溶け込んだ直島地中美術館の見学を楽しみにしていた。
権威的・植民地的人類学の手法と理論などの厳しい批判者である教授の著作からは想定外の、柔和で、ユーモアがあり、あらゆることに「無邪気な好奇心」と関心をおもちのキャラクターがうかがえた。

2010年06月26日 17:39 | 全体 海外からの来客