国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長だより

館長だより
2011年11月28日

韓国蔚山博物館に本館所蔵品の展示

蔚山博物館(金右臨館長)が2011年6月にオープンし、11月29日から第2回企画特別展「75年ぶりの故郷、1936年蔚山達里」が開催され、その開会式典に招待されて祝辞を述べた。この特別展はみんぱくの所蔵品78点で構成されている。その資料は、渋沢敬三さんが主宰したアチック・ミュージアムの同人と協力者が1936年に蔚山の農村・達里で収集したものである。調査には、渋沢さんをはじめ、小川徹さん、宮本馨太郎さんらが、達里出身の東京帝大農学部の学生さんの故郷で調査と収集にあたった。したがって、今回の展示は、農具、かご、運搬具、食器類、婚礼用具などの75年ぶりの「里帰り展示」である。

現在の蔚山は「現代グループ」の本拠地で人口120万人。1936年当時、人口2000人の達里の村の姿は跡形もなく壊され、高層ビルや50階建の集合住宅が林立する大都市である。もちろん、当時の民家や生活用具類は収集、保存されてこなかった。式典に参加した蔚山市長は、「みんぱくの達里資料を1日も早く見たかった。」と述べていたし、若い女性は「私たちが残せなかったものをよーく保存してくれていた」と感謝していた。

永いこと異郷の地、みんぱくの収蔵庫に眠っていた達里資料は、蔚山出身のソウル大学教授の李文雄博士が1987年度に外来研究員としてみんぱくに滞在しているときに発見したものである。2009年から、みんぱくと韓国の国立民俗博物館、および蔚山市(博物館)のスタッフが共同で達里資料の情報収集や達里の現地調査などを行って蔚山博物館の完成時の展示に備えてきた。その国際連携研究の成果が、今回の特展にいかんなく反映されている。それにしても、韓国の都市の「伝統文化」の現代的活用へのエネルギーには圧倒される思いをした。

2011年11月28日 17:39 | 全体 国際学術協定ほか