アイヌ新法
アイヌの人たちは、民族としての法的地位と権利保証をもとめて1980年代半ばより活発な運動を展開しはじめた。具体的には、アイヌ語の学習をはじめとする民族文化復興や自立化基金の創設などの国に対する法律制定の要求である。
 1990年代初頭には、世界の先住民の権利獲得運動の高まりを背景にした北海道ウタリ協会の「北海道旧土人保護法」の廃止とアイヌ新法要求が強力に進められた。同時にアイヌ民族出身の国会議員の誕生や、二風谷ダム裁判のアイヌ文化を無視して破壊につながると断言した画期的判決などで、政府や関係省庁を動かし、政治的条件のタイミングのよさもあって「アイヌ新法」が1997年に制定された。正式名称は「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」である。  これによって1899年制定の「旧土人保護法」は廃止された。アイヌの人びとが求めていた先住権は明記されなかったが、「付帯決議」にはアイヌの「先住性は歴史的事実」とある。
 この法律の事業主体である「アイヌ文化振興・推進機構」によって、アイヌ語の学習や民族技術の習得などの事業は活発におこなわれ、一定の成果をあげている。しかし、いまだアイヌが真に求めていた民族法へ進むための基礎づくりとなる国民一般への啓発推進事業への取り組みが立ち遅れているのが課題である。
 ちなみに民博では、国がアイヌを民族として認めていなかった1978年に、学問的見地から日本のなかの独自の民族文化としてアイヌ文化の展示を構成し、公開した。その際に、展示される当事者であるアイヌの意見を取り入れ、展示作業にもおおくのアイヌの人びとの協力を得た。
アイヌ民族文化祭

北海道ウタリ協会の主催で毎年ひらかれている「アイヌ民族文化祭」。
各地の古典舞踊をはじめとする民俗芸能の公演がおこなわれる