無形文化遺産とは

無形文化遺産の指定地へ導く国道沿いの看板 ユネスコの世界遺産は、たいていの読者がご存じでしょう。世界遺産検定というのまであって、世界遺産をめぐる旅行パックはどこでも人気。

でも、同じユネスコが制度化した無形文化遺産というのは、まだまだこれから認知度が高まっていくところだと思います。なにしろ、世界遺産の制度ができたのが1972年で40年前。これに対して無形文化遺産は2003年で、わずか10年前です。

日本では能や歌舞伎、あるいは各地の民俗芸能(早池峰神楽など)が、無形文化遺産に指定されています。日本の制度でいえば、無形文化財や民俗文化財にあたるわけですが、これが世界的に広まっていく過程でどんどん拡大解釈され、わかりにくくなる面もある。最近は、日本料理を無形文化遺産になんて話もありましたけれど、なかなかピンとこないのではないでしょうか。

マダガスカルで唯一の無形文化遺産、ザフィマニリの木彫に関する知識も、同じようなものかもしれません。これは、無形文化遺産となりうる5つの分野のうち、「自然および万物に関する知識および慣習」にあたるのだそうです。ちなみに他の4つは、「口承による伝統及び表現」「芸能」「社会的慣習、儀式および祭礼行事」「伝統工芸技術」なのだそうです。

ザフィマニリの木彫は、ちょっと考えると「伝統工芸技術」にあたりそうですが、たぶん、どのくらい古い伝統なのかがまだよくわかっていないことが問題。むしろ、身近な自然や伝説、社会関係のなかで木を彫る技術も継承しているということが、人類全体の遺産として評価できる点だと思います。

というわけで、2013年春の展示会では、ザフィマニリの木彫作品だけでなく、彫り師のくらしやそれ以外の人たちのくらし、周囲の自然環境までひっくるめてご紹介することにします。