国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

イヌイット版画  2009年9月8日刊行
岸上伸啓

現在、みんぱくには約400点のイヌイット版画が所蔵されている。今回の特別展「自然のこえ 命のかたち-カナダ先住民が生みだす美」では、イヌイット版画を55枚あまり展示している。これらのほとんどが、1980年代にカナダ国立人類博物館のジョージ・マクドナルド博士らの協力のもとで名古屋大学名誉教授・小谷凱宣によって収集された資料である。

みんぱく所蔵のイヌイット版画は、おもに1970年代から1980年代後半に制作されたものであるが、定住化する以前(1950年代以前)のイヌイットの狩猟活動や社会生活、家族、シャマニズム、動物、神話を描き出したものが多い。それらの版画では、ホッキョクグマやフクロウがイヌイット独自の視点で描かれており、一見するだけで文化の違いを実感することができる。さらに、その表現力のユニークさとすばらしさには、驚かされる。

イヌイット版画は、芸術作品であるとともに、彼らの世界観や社会変化を知る手がかりとなる貴重な文化人類学の資料でもある。

岸上伸啓(先端人類科学研究部)

◆今月の「オタカラ」
【上】標本番号:H115398 / 標本名:夏のふくろう
【下】標本番号:H133401 / 標本名:誇らしげな父親

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※特別展「自然のこえ 命のかたち―カナダ先住民の生みだす美」にて公開

◆関連ページ
特別展「自然のこえ 命のかたち―カナダ先住民の生みだす美」