国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

アイヌモシリ

アイヌモシリ
アイヌ(アイヌ語で人間の意味)は、歴史的に北海道を中心に、サハリン(樺太)南半分やクリール(千島)列島、さらに本州北端におよぶ広大な領域に生活をはぐくんだ狩猟採集民である。アイヌは、自らの生活領域をアイヌモシリ(人間の大地・世界)とよんだ。アイヌにとって人間生活に必要な動植物をあたえてくれる自然環境はカムイ(神)であり、これとの共生をはかる多様な儀礼は、現代的にいえば、まさに生態系の循環をはかるために欠かせない重要な役割をもっていた。初夏から秋にはサケ、マスが大量に河川を遡上し、秋から冬には群れなすエゾシカをたやすく捕獲でき、動物性食品や衣服の材料を確保できた。また初夏にはオオウバユリの根茎から良質のでんぷんを採取できた。寒冷な風土ではあるが、わずかに雑穀栽培もおこなっていた。
19世紀中ごろのアイヌの居住地域
19世紀中ごろのアイヌの居住地域