国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

第45回新着資料展示「クメール文化の華─カンボジアの音楽と芸能─」



【 魔王リアップの仮面 】
◆ 期 間:2001年8月24日(金)~2002年2月17日(日)
◆ 場 所:国立民族学博物館 新着資料展示コーナー
展示担当:国立民族学博物館研究部 寺田吉孝 福岡正太
王立芸術大学(プノンペン) サムアン・サム

カンボジアの人口の9割以上を占めているクメールの人たちは、アンコール王朝時代(9~15世紀)に独自の文明を築きあげました。アンコール・ワットは、12世紀にヒンドゥー教の神、ビシュヌカー(ヴィシュヌ)のために建てられ、クメール文明の象徴となっています。この遺跡の前に立つと、その美しさと雄大さに圧倒されます。壁面のいたるところに浮き彫りがほどこされ、そのなかでもアプサラ(天女)たちの優美な舞姿や微笑みはいつまでも心に残ります。楽人や楽器の浮き彫りもあり、音楽や舞踊が演じられていた当時の様子がうかがえます。

 現在のクメール音楽や芸能は、アンコール時代の輝かしい伝統を受けついでいると考えられています。宮廷舞踊のゆっくりと流れるような動き、猿や魔物が演者にのりうつったかのようにみえる仮面劇、影絵芝居がつむぎ出す光と陰のマジック、そして物語の進行をささえる語り、歌、楽器の音の世界…。これらの芸能は、クメールの宗教観と結びついており、新年を祝ったり、雨や豊かな実りを祈る儀礼の一部として演じられていました。争う猿たちをさとす仙人が、天空をかける猿の王が、足をのばして川をせき止める巨大な魔物が、そして蛇の矢をうけて窮地に立たされる将軍が、現在でも見るものを神話的世界へ誘います。

 この展示では、平成11~12年に現地で収集した資料のなかから、宮廷舞踊の衣装・影絵人形・仮面・楽器など、約100点を厳選して紹介します。クメール文化の華ともいえるカンボジア音楽と芸能をお楽しみ下さい。


※この新着資料展示にあわせ、新たにビデオテーク番組をつくりました。