国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

パプアニューギニア(4) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年7月18日刊行
林勲男(国立民族学博物館准教授)

複数の家族が共同生活をするロングハウスが儀礼をおこなう主な場所です
ベダムニ族男子の成人儀礼

熱帯のジャングルで暮らすべダムニ族の男の子たちは、成人儀礼に参加して初めて大人として認められます。日本のように、何歳になったら大人というわけではないのです。小学校を卒業して間もない子もいれば、高校を卒業して街で働いていて、儀礼に参加するために、休暇を取って里帰りする若者もいます。両親やその兄弟姉妹たちが育てるブタが、ごちそうに出せる大きさになったら儀礼に参加できるのです。

 

赤、白、黒はほかの儀礼でも体にぬりますが、黄色は成人儀礼の時だけです

歌やダンスでお祝い

成人儀礼は数週間、時には数か月にわたって断続的におこなわれ、他の村からも大勢のお客さんがやってきます。夜を徹してお客さんたちは歌やダンスで祝福し、主催する村はたくさんのごちそうをふるまいます。そうしたうたげが数回あります。最後の約1週間は、成人儀礼を受ける男の子たちだけで森の中で過ごし、その間にベダムニ族の大人の男として生きていくための知識や心構えを年長者から教わります。

木の皮の束をきつくかみの毛にしばりつけ、体には黄色い土で多くの線を描きます。黄色は、子どもから大人へと移行していることを表しています。そして儀礼のクライマックスでは、赤土を水にといて全身をぬり、目のまわりを白と黒でふち取ります。ゴクラクチョウの朱色の尾羽の頭かざりと、クスクスという動物の毛皮の額当てをつけます。それは熱帯の森にいる色あざやかな鳥の姿を思わせます。


熱帯のあざやかな鳥のように着かざります
 

一口メモ

パプアニューギニアにキリスト教などの外来文化が入ってきたのは、おそい所では1960年代になってからです。ですから、誕生日がわからないという大人も少なくありません。

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