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みんぱく世界の旅

イギリスのムスリム(3) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年10月8日刊行
相島葉月(国立民族学博物館准教授)
ムスリムのおしゃれ

世界の一流ブランドが並ぶ首都ロンドンの目抜き通り=相島香里撮影

イギリスの首都ロンドンは世界的なファッションの発信地。イギリス人ムスリム(イスラーム教徒)もおしゃれな人がたくさんいます。昨年、スウェーデンのカジュアル衣料大手「H&M」がヒジャーブ姿のイギリス人ムスリムのモデルを初めて起用しました。ヒジャーブはムスリム女性が髪の毛を覆うスカーフのことです。ファッションリーダー的なムスリム女性を「ヒジャビスタ」と呼び、第1回で紹介した動画サイト「ユーチューブ」のビデオ「Happy British Muslims」(幸せなイギリス人ムスリムたち)にも多数登場します。


ビデオ「Happy British Muslims」でヒジャーブ姿で踊る女性=The Honesty Policu制作/YouTubeより

一般的にヨーロッパでイギリス人女性と言えば、肌の露出度の高い服装。日本より夏が短く、気温が25度を超える日は数える程しかありません。そのため、イギリス人は日光浴が大好きで、晴れた日は公園の芝生にビキニで寝ている人もいます。
しかし、ハラールな服装を気にかけるムスリム女性は、夏でも身体の線が出ないロングスカートや長袖を着ます。ハラールとは「(神に)許容されたもの」という意味ですが、イスラームの聖典クルアーン(コーラン)や預言者ムハンマドの言行録(ハディース)の解釈をめぐって、スカーフの仕方や化粧をしてよいのかどうか、女性がズボンをはいてよいのか、など議論が分かれます。

 

イギリスのランカスター大学でイスラーム学を教えるシュルーク・ナギーブ先生は、講義中もヒジャーブをしています=フェイスブックより

フランスでは公立校の生徒や公務員のヒジャーブ着用が禁止されていますが、イギリスでは全く問題ありません。ロンドンのヒースロー国際空港に到着した際に、入国審査官がヒジャーブをしていても驚かないで下さいね。

 

一口メモ

衣料品の生産販売の「ユニクロ」は、日系イギリス人ムスリムでデザイナーのハナ・タジマ氏と組み、ハラールファッションを展開しています。

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