国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館員の刊行物

聖地のポリティクス―ユーラシア地域大国の比較から  2019年3月20日刊行

杉本良男、松尾瑞穂(編)

風響社
【共同研究成果】

出版物情報

主題・内容

ユーラシア地域大国であるロシア、中国、インドにおける聖地の政治経済学を比較することを通じて、社会主義的近代を経験した地域における宗教の現代的意義を問い直すとともに、西欧主導の聖俗論を再考する。

おすすめのポイント(読者へのメッセージなど)

圧倒的にキリスト教世界を中心としてきたこれまでの聖地研究では、聖俗の議論が主題となってきたのに対し、ロシア、中国、インドというユーラシア地域大国の聖地は、近代国家や経済政策と無縁ではいられない。現在進行形の聖地をめぐる動態を、観光化や世界遺産化、ナショナリズムといった、当該地域の新しい動きとの関りから描き出す。

目次

序 杉本良男・松尾瑞穂

第一部 物語性と歴史性

  • 第1章「聖山は遠くにありて―19世紀の修道士パルフェーニーのアトス」 望月哲男
  • 第2章「歴史のなかの聖地と記憶のなかの〈聖地〉―福建客家社会における寧化石壁、李氏大宗祠、保生大帝廟」 小林宏至
  • 第3章「聖地と物語―マハーヌバーヴ教団の事例から」 井田克征

第二部 観光化と再整備

  • 第4章「北ロシアにおける聖地と文化遺産―社会主義の経験と景観表象の変容」高橋沙奈美
  • 第5章「近代中国の指導者ゆかりの聖地構築」 韓 敏
  • 第6章「「グローバル化を生きるインド「仏教聖地」」 前島訓子

第三部 再聖地化の諸相

  • 第7章「新仏教聖地建設の夢―カルムィク人の仏教復興と民族文化復興のあいだ」井上岳彦
  • 第8章「聖地言説と信仰実践―中国梅州市の呂帝廟をめぐる「聖地」の複雑性」河合洋尚
  • 第9章「洪水を超えて―南インド、タミル農村における廃墟の聖地化」杉本良男

第四部 イデオロギーの介入

  • 第10章「ロシアの「メッカ」の創造―ロシア連邦ボルガル遺跡の開発とイスラーム」櫻間瑛
  • 第11章「中華聖地」と「我々の聖地」に見る現代中国の政治、宗教、親族―炎帝黄帝陵から祖先墓まで」 川口幸大
  • 第12章「インド・ヒンドゥー聖地の複数化する宗教資源とその正当性」松尾瑞穂

あとがき 杉本良男