国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館員の刊行物

ケアが生まれる場 他者とともに生きる社会のために  2019年4月26日刊行

森明子(著)

ナカニシヤ出版

出版物情報

主題・内容

福祉国家モデルは破綻しつつあり、家族と社会の閾は流動化している。 本書はこの流動的な局面で何が起こっているか、ケアという視点から描き出す。他者とともに生きる社会のためにケアがもつ潜在力を明らかにする。

おすすめのポイント(読者へのメッセージなど)

アジア、アフリカ、南米、ヨーロッパを含めた世界のさまざまな地域で、長年フィールドワークを行ってきた研究者による15の物語。ケアという切り口を通して、人間のいとなみのさまざまな局面にあらわれる想像力の多彩さと同時に、そこに合い通じるものがあることが見えてくる。

目次

ケアが生まれる場へ-森明子
第1部 福祉の試み、制度の隙間
  高齢者ケアをめぐる共同性の再編――北部タイの郊外村の事例-速水洋子
  最適化されたケア――フィンランドの社会サービス改革と「市民‐消費者」の浮上-高橋絵里香
  家族と地域が重なり合う場――沖縄の離島における小規模多機能型居宅介護-加賀谷真梨
  福祉オリエンタリズムと人類学――ベトナムの村落における障害者ケアに見る「社会」の弱さ-加藤敦典

 

第2部 生の空間としての家族の境界面

 

  ケアが動き出すとき――ラオス低地農村部の看取りの現場を事例に-岩佐光広
  死者への貢献の集め方――ガーナ南部における葬儀と集団の生成-浜田明範
  津波のあとで、終わりの手前で――津波被災地域のケアと家-木村周平

 

第3部 異質な他者と出会う

 

  宗教のケア・ネットワーク――占領下ドイツにおける避難民支援-中野智世
  街区のラーデン――1980年代ベルリンの再開発とケア-森明子
  都市に生きる場所――タイにおける「寺住まい」の実践からみる社会編成-岡部真由美
  ケアの空間、かりそめの場所――東アフリカの難民キャンプにおける市場の形成-内藤直樹

 

第4部 隣り合う他者とのあいだで

 

  乳のやりとり――下級武士の日記にみる江戸時代のいのち-沢山美果子
  あの虹のむこう――大阪市西成区の単身高齢者とその世代・セクシャリティ介護-西真如
  マプーチェ医療とチリ人患者――サンティアゴの先住民医療の現場から-工藤由美
  病気と付き合う――慢性病の食事療法をめぐる民族誌的試論-モハーチ ゲルゲイ

 

あとがき

 

 

人名索引・事項索引