国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

民族学者の仕事場:Vol.3 立川武蔵―ヒンドゥー教と図像

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─ 話が前後しますが、ヒンドゥー教の図像の研究をしていくつか本を出されているでしょう。図像はヒンドゥー教にとって、根本的なものなんですか。
ヴェーダの祭式、ナーシク、インド。
立川 そうですね、ヴェーダの時代には、神々を像にあらわしてなかったんですけれど、ヒンドゥー教になると、神々の彫像をたくさんつくりますし、絵にも描いています。それで、図像学的な特徴を知らないと、ヒンドゥー教を理解できません。そういった要素は、マンダラにも入っています。もともと仏教でも、当初は仏の彫像をつくることはなかったんです。それがヘレニズムの影響でブッダをあらわすようになり、そしてヒンドゥー教と競いあって、菩薩なりを像につくってきたんです。それがマンダラのなかで並ぶことになってきたんですね。マンダラができるようになってから仏像や菩薩像がつくられるようになったのではなくて、マンダラができる以前から、菩薩の像はどんどん造られていたんです。そしてマンダラができる頃には、仏や菩薩たちの図像のシステムもできあがっていったんです。
 
※写真:ヴェーダの祭式、ナーシク、インド。

ヴィシュヌ(左)とヴィシュヌの妻(中央)に関するヒンドゥー教儀礼、プネー、インド。
ヴィシュヌ(左)とヴィシュヌの妻(中央)に
関するヒンドゥー教儀礼、プネー、インド。
仏や菩薩たちのシステムを有するマンダラ、カトマンドゥ。
仏や菩薩たちのシステムを有するマンダラ、
カトマンドゥ。

 
【目次】
マンダラとはなにかマンダラを観想する武蔵少年、学に志す「中論」研究 ─ 空と色インド思想 ─ 実在論と唯名論の闘い世界が神の姿であるというインド的世界観ヒンドゥー教と図像実践としての宗教近代と日本仏教私有財産をどう考えるか「癒し」の共同研究癒しと救いの違い浄土とマンダラの統合